裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
昭和36(う)146
- 事件名
業務上過失致死傷被告事件
- 裁判年月日
昭和37年2月23日
- 裁判所名・部
札幌高等裁判所 第三部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第15巻1号65頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
岩盤深部に存在した広範囲の節理(亀裂)に基因する岩石崩落事故と予見可能性および採石作業責任者の注意義務
- 裁判要旨
勾配約七〇度の山腹の露出岩壁下部に数回にわたつてダイナマイト発破をかけ採石作業を試みた結果、最後の発破施行時から約二〇時間経過後俄かに大量の岩石が崩落し岩壁直下で稼働中の作業員の死傷を惹起した場合において、その崩落の原因は岩盤表面から一・五ないし二メートルの深部に広範囲な節理(亀裂)が存し崩落岩石を支えていた部分が小面積にすぎなかつたため発破の震動により周囲岩盤の支持を失つた岩石が節理面にそつて滑り落ちたことにあり、右節理の存在が通常の方法では容易に知りえず、かつ発破施行後も岩盤表面に特段の変化を認めえなかつたときは、たとい現場の傾斜が急であるとか周辺岩盤に節理が発達しているとかの事情がうかがわれたとしても、一般に岩石崩落の危険を予見することは不可能というべく、作業責任者に対し、岩石崩落の招来する危険性のないような発破位置を選定すべきこと、または発破作業後岩石直下に作業員を入れないようにすること等の注意義務を課することはできない。