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高等裁判所 判例集

事件番号

 平成20(う)1097

事件名

 傷害致死被告事件

裁判年月日

 平成21年5月25日

裁判所名・部

 東京高等裁判所  第5刑事部

結果

 破棄自判

高裁判例集登載巻・号・頁

 第62巻2号1頁

原審裁判所名

 東京地方裁判所

原審事件番号

判示事項

 統合失調症の被害妄想の強い影響下で行われた傷害致死の行為につき,上告審が原審が採用しなかった心神喪失を示唆する鑑定の基本的な信用性を肯定して破棄差し戻した後の控訴審において,上告審判決が要検討事項として指摘した点について新たに行った事実取調べの結果を踏まえ,鑑定の信用性を肯定できないとして心神耗弱が認定された事例

裁判要旨

 上告審判決が基本的に信用するに足りるとした心神喪失を示唆する二つの精神鑑定に関し,同判決中で要検討事項として指摘した3点について新たに行った事実取調べの結果によると,(1)両鑑定が前提とする「統合失調症にり患した者の病的体験の影響下にある認識,判断ないし行動は,一方で認められる正常な精神作用により補完ないし制御することは不可能である」とする立場は,現在の精神医学的知見の現状から見て,一般的であるとはいい難く,(2)「本件行為自体又はこれと密接不可分な場面において,相応の判断能力を有していたと見る余地のある事情」をいわば静的な状態説明概念にすぎない「二重見当識」をもって説明することはできず,(3)被告人の病型である妄想型の統合失調症においては,臨床的にも,行為時に強い幻覚妄想状態にありながら,その後程なくして正常な判断能力を回復することは考えられないから,両鑑定は,被告人が本件行為後程ない時点で正常な判断能力を備えていたと見られる事情を全く考慮しない点でその推論過程には大きな問題があって,いずれもその信用性を肯定できず,本件犯行時の被告人は,心神耗弱の状態にあったと認められる。

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