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下級裁裁所 裁判例速報

事件番号

 平成18(行コ)16

事件名

 懲戒免職処分取消等(通称 町立中学校教諭懲戒免職)

裁判年月日

 平成18年11月9日

裁判所名・部

 福岡高等裁判所  第3民事部

結果

 破棄自判

原審裁判所名

 熊本地方裁判所

原審事件番号

 平成18(行ウ)16

原審結果

 棄却

判示事項の要旨

 1 地方公務員たる教員について他の職種の公務員よりも重い懲戒処分の指針(以下「指針」という。)を定めることも,教員が児童・生徒を教育指導する立場にあるというその職責の重さに照らせば,合理的な理由がないとはいえない。
2 教員が複数の非違行為を犯した場合には,各非違行為毎の標準処分例よりも更に重い処分(加重処分)をすることは,それができる旨指針に定められている(加重処分条項)ことからしても,許される。
  しかし,各非違行為毎の標準処分例が最も重いものでも「停職」に過ぎない場合に,加重処分として「免職」を選択するについては,当該教員をめぐるあらゆる事情を総合考慮した上で,なお同人をその地位にとどめ置くわけにはいかないという場合に,初めてその相当性が肯定される。
3 本件のX教員(控訴人)の場合には,ア 事故を伴わない酒気帯び運転が相次いで2回,イ 生徒の氏名等が保存されていた光磁気ディスク(MO)の紛失の各非違行為が認められ,特にアは強く責められて然るべきである。
しかし,アの標準処分例は「停職」,イのそれは「減給」又は「戒告」であり,アについては,運転代行を依頼しようとした経緯があること,2回といっても実質的には一度の機会に繰り返されたものであること,常習性が認められないこと,事故を伴わなかったこと,イについては,MOは回収されて実害を生じなかったこと,もともと生徒の成績等の重要な情報は含まれていなかったこと,といった事情があるほか,X教員は,非違行為の発覚後上司の指示どおり謹慎を守ってきたこと,教師としての資質・能力・勤務態度に欠けるところはないばかりか,むしろ高い評価を受けてきた人物であることといった酌むべき事情もある。これらの事情を総合すると,加重処分として「免職」を選択することは,上記2の判断基準に照らして,いかにも厳しすぎる。
  よって,X教員に対する懲戒免職処分は違法であって取消しを免れない。

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