裁判例結果詳細
下級裁裁所 裁判例速報
- 事件番号
平成17(ネ)1040
- 事件名
保険金請求控訴事件
- 裁判年月日
平成18年12月21日
- 裁判所名・部
福岡高等裁判所 第3民事部
- 結果
破棄自判
- 原審裁判所名
福岡地方裁判所
- 原審事件番号
平成17(ワ)413
- 原審結果
棄却
- 判示事項の要旨
1 Aは,保険会社(Yら)との間で,合計3000万円の死亡保険金が出る生命保険契約を締結しており,その保険金の受取人は父Bと指定されていた。
ところが,Aが,多額の借金を苦にして自殺を図るなどしたために,B及び母Cも将来を悲観して一緒に死のうということになり,自動車もろとも海に飛び込んで一家心中を遂げ,全員が死亡してしまった(ただし,死亡時刻はC,A,Bの順であった。)。
2 ところで,Bは,一家心中に先立ち,Cの実妹であるXに宛てて,「本件保険金をもってAの債務等の清算をして,残余のうちから一家の永代供養料を支払ってもらいたい」旨の本件手紙を送付しており,これが心中の翌日,Xのもとに届いたところから,XがYらに保険金の請求をした。
3 本判決は,上記の事情の下にあっては,本件手紙はAら3人の総意を表したものであり,また,保険金でAの債務の清算をするなどの後事をXに託するという以上,Xをして保険金を受領せしめる意思であったことは明らかであり,この意思を可能な限り酌んでしかるべきであるとして,Xの保険金請求権を認めた。
なお,その場合には,保険金の受取人がBからXに変更されたことについてのYらへの通知等が必要になるが,Aら一家が心中を決意したのは本件手紙が作成される直前であること,その後も心中の企図を秘して行動していたことが本件手紙の文面から明らかであること,Aら一家が,保険金受取人の変更等についてはYらへの通知等が必要であることを理解していたとは考えられないことなどからして,本件の場合にそのような手続を要求するのは酷であるとして,それがなくてもXが保険金を請求するのに差し支えないとした。
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