裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成17(行コ)1
- 事件名
費用徴収処分取消等,債務不存在確認請求控訴事件(原審・札幌地方裁判所平成13年(行ウ)第1号(甲事件),第17号(乙事件))
- 裁判年月日
平成17年7月29日
- 裁判所名
札幌高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
生活保護の受給者が,転居先の家賃額が家賃基準額を超えているにもかかわらず,超えていないとの虚偽の申告をして不正に住宅一時扶助(敷金等)及び生活一時扶助(移送費)を受給したとして生活保護法78条に基づきされたその受給額全額の返還を求める費用徴収決定処分が違法,無効であるとして,市に対してした当該処分に基づく費用返還債務の不存在確認請求が棄却された事例
- 裁判要旨
生活保護の受給者が,転居先の家賃額が家賃基準額を超えているにもかかわらず,超えていないとの虚偽の申告をして不正に住宅一時扶助(敷金等)及び生活一時扶助(移送費)を受給したとして生活保護法78条に基づきされたその受給額全額の返還を求める費用徴収決定処分が違法,無効であるとして,市に対してした当該処分に基づく費用返還債務の不存在確認請求につき,市においては,生活保護法8条1項に基づき厚生労働大臣が定めた「生活保護法による保護の基準」(昭和38年4月1日厚生省告示第158号)等の通達を前提として要保護者が家賃基準額以内の家賃の住居に転居する場合に限って住宅一時扶助(敷金等)及び生活一時扶助(移送費)を支給する解釈運用が採られており,厚生労働大臣は,住宅扶助について,要保護者の最低限度の生活の需要を満たしつつ,これを超えないものとして家賃基準を設定しているところ,この基準額の範囲を超える家賃の住居に居住することは,他の種類の扶助から不足分を流用する事態を不可避的に招来することとなるから,扶助の種類ごとに保護の範囲を決定することによって被保護者の生活の各分野で最低限度の生活の需要を満たしつつこれを超えないものとすることとした前記法の趣旨が害されることとなるのみならず,家賃基準額を超える住居への居住を是認し助長することにもなりかねず,前記法の趣旨に反するなどとして前記解釈運用に基づく取扱いに合理性があるとし,また,憲法25条が保障する生存権の内容として,保護費の使途を自由に決定し得ることまで保障されているとはいえず,ましてや,憲法13条が保障する自己決定権の内容として,保護費の使途を自由に決定し得ることが保障されているとは認められないから,市の前記通達等の解釈運用に違憲違法はなく,前記処分が違法,無効であるとはいえないとして,前記請求が棄却された事例
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