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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成14(行ウ)77

事件名

 退去強制令書発付処分取消請求事件

裁判年月日

 平成17年2月3日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 出入国管理及び難民認定法(平成13年法律第136号による改正前)49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決につき,同法施行規則(平成13年法務省令第76号による改正前)43条に規定する裁決書が作成されていないことが,同裁決の取消事由とはならないとされた事例 
2 出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出を棄却し,在留特別許可を付与しなかった法務大臣の裁決につき,法務大臣に裁量権の逸脱又は濫用があったとはいえず,違法とはいえないとされた事例

裁判要旨

 1 出入国管理及び難民認定法(平成13年法律第136号による改正前)49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決につき,同法施行規則(平成13年法務省令第76号による改正前。以下同じ)43条が裁決は同規則別記第61号様式による裁決書によって行う旨規定したのは,法務大臣の裁決を書面で行わなければ有効に成立しない要式行為として定めたものとまでは解されず,退去強制手続における外国人の権利保障の観点から,容疑者が退去強制事由に該当するか否かの判断を慎重かつ的確に行わせるとともに,後続する機関への引渡しを確実に行わせることを目的としたものであると解されるとした上,裁決書を作成することなく行われた法務大臣の前記裁決には瑕疵があるが,裁決書は,退去強制事由が存するか否かに関する法務大臣の判断が適正に行われることを担保するための手段にとどまるものであるから,出入国管理及び難民認定法(前記改正前)24条4号ロに規定する退去強制事由があること自体について容疑者が争っていたとは認められないことからすれば,前記裁決における法務大臣の判断の適正の確保の点に影響があったものとは認められず,同裁決を取り消さなければならないほどの瑕疵が存するとはいえないとされた事例 
2 休暇目的,短期滞在資格で本邦に入国し,在留期間経過後も残留していたイラン・イスラム共和国籍を有する者がした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出を棄却し,同人に対し在留特別許可を付与しなかった法務大臣の裁決につき,在留特別許可の判断については,我が国の国益を保持し出入国管理の公正を図る観点から,当該外国人の在留状況,特別に在留を求める理由の当否のみならず,国内の政治,経済,社会等の諸事情,国際情勢,外交関係,国際礼譲などの諸般の事情を総合的に勘案してその拒否を判断する裁量権が法務大臣に与えられているところ,前記の者が本国において反政府活動をしていたとの事実は認められず,同人が難民に当たるとは認められないことなどからすれば,法務大臣の前記裁決に裁量権の範囲を逸脱した違法があるとはいえないとした事例

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