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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成15(行ウ)597

事件名

 公文書非開示決定取消請求事件

裁判年月日

 平成16年12月24日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 国立大学の動物実験計画書のうち,申請者氏名欄及び連絡先欄(いずれも講師以上の者を除く。)を記載した文書に記載された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条1号に不開示情報として定める「個人に関する情報」に該当するとされた事例 2 国立大学の動物実験計画書のうち,実験題目及び実験内容中の研究者にとって研究のプライオリティ等を示す最も重要な部分を記載した情報並びに同大学が実験動物として搬入されるニホンザルを個体管理するために作成したニホンザル戸籍簿の実験利用記録欄の「処置記録」中,研究者にとって研究のプライオリティ等を示す最も重要な部分を記載した情報が,いずれも,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条6号ハに掲げるおそれのある事務事業情報に該当するとされた事例 3 国立大学が,実験動物として搬入されるニホンザルを個体管理するために作成したニホンザル戸籍簿中の識別用各個別写真が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条6号ハに掲げるおそれのある事務事業情報に該当するとされた事例 4 国立大学で動物実験を行おうとする研究者の請求により,担当職員が,実験動物取扱業者から実験動物を購入するという手続を記載した書類である「物品請求及び命令書・管理簿(乙)」及び「物品購入等請求書」中の「品名」欄,「規格品質」欄,「納入」又は「相手方」欄に記載された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条2号イに不開示情報として定める法人等情報に該当するとされた事例

裁判要旨

 1 国立大学の動物実験計画書のうち,申請者氏名欄及び連絡先欄(いずれも講師以上の者を除く。)を記載した文書に記載された情報につき,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条1号本文の個人識別情報に当たるとした上,同計画書に含まれる情報を公開すべきとする法令の定めや事実上の慣習が存在するとは認められず,同情報の開示請求に対する決定がされた当時,前記大学の助手及び大学院生の氏名が同大学のホームページに掲載されることが事実上の慣習になっていたと認めることもできないことなどから,同号ただし書イの場合に該当しないなどとして,前記情報が,同号に不開示情報として定める「個人に関する情報」に該当するとした事例 2 国立大学の動物実験計画書のうち,実験題目及び実験内容中の研究者にとって研究のプライオリティ等を示す最も重要な部分の情報並びに同大学が実験動物として搬入されるニホンザルを個体管理するために作成したニホンザル戸籍簿の実験利用記録欄の「処置記録」中,研究者にとって研究のプライオリティ等を示す最も重要な部分を記載した情報につき,同各部分には,当該研究の重要事項を示す文言が記載されており,当該研究者の専門分野及び研究業績等,その他の情報と照合することによって,どのような目的のために研究を行っているのかやその研究の価値などが推測し得るものであるから,当該研究の独創性や独自性,研究者の着眼点等,研究者の優先権に相当する部分が含まれていることが認められ,このような情報が公になれば,その研究の独創性や独自性,研究者の着眼点等,その研究者の優先権に相当する部分が失われることとなり,結果として,研究者の自由な発想,創意工夫や研究意欲が不当に妨げられるなど,研究の能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあると認めることができるから,前記情報は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条6号ハに掲げるおそれのある事務事業情報に該当するとした事例 3 国立大学が,実験動物として搬入されるニホンザルを個体管理するために作成したニホンザル戸籍簿中の識別用各個別写真につき,これを開示した場合,そこに写っているニホンザルの写真が動物実験に対する反対活動に用いられることによって,調査研究のために本当に必要な動物実験についても,これを行うことが困難又は不可能となるおそれが客観的にあり,実験動物を用いた研究の「能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」が存在すると認めることができるとして,前記写真が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条6号ハに掲げるおそれのある事務事業情報に該当するとした事例 4 国立大学で動物実験を行おうとする研究者の請求により,担当職員が,実験動物取扱業者から実験動物を購入するという手続を記載した書類である「物品請求及び命令書・管理簿(乙)」及び「物品購入等請求書」中の「品名」欄,「規格品質」欄,「納入」又は「相手方」欄に記載された情報につき,前記の大学に対して実験動物を納入している実験動物取扱業者の名称や当該業者の納入した実験動物の種類,品質等が明らかになると,平和的な抗議活動や言論活動だけでなく,これらの業者の営業に不当な圧力をかけたり,営業を妨害するなどの活動が行われる可能性があり,現に,これらの業者はそのおそれを抱いていることを認めることができ,このような妨害活動等が行われると,実験動物取扱業者の営業に不利益な事態が発生する可能性があるということができるとして,前記書類が行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号による改正前)5条2号イに不開示情報して定める法人等情報に該当するとした事例

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