裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成14(行ウ)453
- 事件名
行政文書不開示決定処分取消請求事件
- 裁判年月日
平成16年4月23日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 海外再保険取引のリスク管理の観点から損害保険会社が金融庁に提出した,又は金融庁作成に係る資料に記載された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イの不開示情報に該当するとされた事例 2 米国における同時多発テロに起因して再保険取引の観点から保険会社が金融庁に提出した,又は金融庁作成に係る資料のうち,保険会社からの金融庁に対する報告内容等に関する情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イの不開示情報のほか,同法5条2号ロの不開示情報の双方に,又は,そのいずれかに該当するとされた事例 3 保険業法110条1項に基づき保険会社から金融庁に提出された業務報告書のうち,事業報告書等の変更に係る部分に記載されている情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イの不開示情報に該当するとされた事例 4 保険業法129条に基づき保険会社に対して実施された立入検査に際して金融庁が作成した資料及び同法128条に基づき保険会社から提出された立入検査結果に対する報告書に記載された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条6号イ及び同条2号イ所定の不開示情報に該当するとされた事例 5 行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報に該当するとして不開示とした行政文書の中に,他の法令において開示が認められている部分が含まれるとしても,当該不開示情報を細分化して不開示部分を除いた部分を開示すべき義務はないとされた事例
- 裁判要旨
1 海外再保険取引のリスク管理の観点から損害保険会社が金融庁に提出した,又は金融庁作成に係る資料について,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の「法人等の正当な利益を害するおそれ」があるか否かの判断方法につき,当該文書の個別具体的な記載文言等から当該法人等の権利が具体的に害される蓋然性が明らかにされなければならないとすることは,当該文書の開示を要求することに等しく,不開示情報を定めた法の趣旨に反するから,その判断にあたっては,当該情報がどのような法人等に関するどのような種類のものであるかなどといった一般的な性質から,当該法人等の権利利益等を害するおそれがあるか否かを客観的に判断することが相当であるとした上,一般に,保険会社が実際に行った海外再保険取引に関する情報は,これを開示することにより,当該保険会社の経済的な権利利益,ひいては競争上の地位を害するおそれがあるものであるということができるとして,当該文書に記載された情報が,法5条2号イの不開示情報に該当するとした事例 2 米国における同時多発テロに起因して再保険取引の観点から保険会社が金融庁に提出した,又は金融庁作成に係る資料のうち,保険会社からの金融庁に対する報告内容等に関する情報について,当該情報を公にすれば当該各保険会社の信用の低下等を招くおそれのほか,当該各保険会社のノウハウ,経営戦略等を明らかにし,当該各保険会社の経済的な利益ないし競争上の地位を害するおそれが客観的に認められることなどから,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イの不開示情報のほか,当該情報は,金融庁という監督官庁の要請を受けて提供されたものであり,保険会社と金融庁との間で,情報を提供するに当たり,これを公にしないとの黙示的な合意があったと推認することができることなどから,同法5条2号ロの不開示情報の双方に,又は,そのいずれかに該当するとした事例 3 保険業法110条1項に基づき保険会社から金融庁に提出された業務報告書のうち,事業報告書等の変更に係る部分に記載されている情報について,当該情報は,これが公にされれば,新商品等の存在が当該各保険会社の経営判断と離れたところで公になり,さらに,各保険会社の新商品等の開発に関するノウハウ等が明らかとなってしまい,他の保険会社において同種商品を販売することが可能となるなど,当該各保険会社の権利ないし競争上の地位を害するおそれがあることが客観的に認められるから,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イの不開示情報に該当するとした事例 4 保険業法129条に基づき保険会社に対して実施された立入検査に際して金融庁が作成した資料及び同法128条に基づき保険会社から提出された立入検査結果に対する報告書について,当該文書に記載されている情報は,これが明らかになれば,今後,他の保険会社等において,検査当局による検査において問題となる点が発覚しないように不正に手段を講じる機会を与えることとなり,違法若しくは不当な行為を容易にし,又はその発見を困難にするおそれがあることが認められるから,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条6号イの不開示情報に該当するほか,当該文書に記載された情報は,一般に,当該保険会社の経営状況のみならず,リスク管理の状況やそのノウハウ,将来の経営戦略等を窺い知ることができるものであるから,これが公にされれば,当該保険会社の信用低下等を招くおそれ及びそのノウハウ等に関する経済的利益を害するおそれがあると客観的に認められるから,同法5条2号イ所定の不開示情報に該当するとした事例 5 行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条2号イ所定の不開示情報に該当するとして不開示とした行政文書の中に,保険業法や証券取引法において開示が認められている情報が含まれていたとしても,同法6条1項は,不開示事由に該当する一体的な情報を更に細分化し,その一部を不開示とし,その余の部分を公開することまでをも義務付けていると解することはできないとして,当該不開示情報を細分化して不開示部分を除いた部分を開示すべき義務はないとした事例
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