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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成14(行ウ)54

事件名

 保護申請却下処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成16年2月26日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 生活保護の受給者が海外における求職活動に要したとする海外渡航往復及び目的地における宿泊が,生活保護法11条1項1号,12条2号の生活扶助の対象となる「移送」に当たるとしてした交通費及び宿泊費の支給申請に対し,福祉事務所長がした却下決定が,適法とされた事例
2 生活保護の受給者が選挙の投票に要したとする居住地と投票地との往復が,生活保護法11条1項1号,12条2号の生活扶助の対象となる「移送」に当たるとしてした交通費の支給申請に対し,福祉事務所長がした却下決定が,適法とされた事例
3 生活保護の受給者が海外に滞在していたことを理由に,生活保護法25条2項に基づいて福祉事務所長がした生活扶助費を減額して支給する旨の変更決定が,違法とされた事例

裁判要旨

 1 生活保護の受給者が海外における求職活動に要したとする海外渡航往復及び目的地における宿泊が,生活保護法11条1項1号,12条2号の生活扶助の対象となる「移送」に当たるとしてした交通費及び宿泊費の支給申請に対し,福祉事務所長がした却下決定につき,生活扶助の対象としての移送とは,要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要な移動及びこれに伴って必要となる宿泊等をいい,現に就労していない要保護者が真摯に,かつ,適切な方法で求職活動を行うことは,要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要なものということができるから,そのような求職活動に要する移動及びこれに伴って必要となる宿泊等については,移送に当たるものとして,生活扶助が行われるべきこととなるとした上,要保護者が求職活動を行った事実は認められず,また,仮に同事実が認められるとしても,それが真摯に,かつ,適切な方法で行われたとは認め難く,前記海外渡航往復及び目的地における宿泊が要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要なものであったとは認められないから,前記海外渡航往復及び目的地における宿泊は,前記「移送」には当たらず,生活扶助の対象とはならないとして,前記決定を適法とした事例
2 生活保護の受給者が選挙の投票に要したとする居住地と投票地との往復が,生活保護法11条1項1号,12条2号の生活扶助の対象となる「移送」に当たるとしてした交通費の支給申請に対し,福祉事務所長がした却下決定につき,生活扶助の対象となる移送とは,要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要な移動及びこれに伴って必要となる宿泊等をいうものと解されるところ,選挙権の行使に要する移動等が直ちに要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要とはいえないが,選挙権の保障の重要性にかんがみ,選挙権を有する要保護者が,その行使のために最低限度の生活を保障されない事態が生ずるのは望ましくないから,選挙権を行使する上で真に必要と認められる移動等については,移送に当たるものとして,生活扶助の対象となると解する余地があるとした上,要保護者が居住地と投票地を往復した事実はなく,仮に同事実が認められるとしても,それが選挙権を行使する上で真に必要なものであったとは認め難く,要保護者の最低限度の生活の保障及び自立の助長に必要なものであったとも認められないから,前記要保護者の居住地と投票地との往復は,前記「移送」には当たらず,生活扶助の対象とはならないとして,前記決定を適法とした事例
3 生活保護の受給者が海外に滞在していたことを理由に,生活保護法25条2項に基づいて福祉事務所長がした生活扶助費を減額して支給する旨の変更決定につき,国外に現在している要保護者であっても,旅行等国外に滞在していることが一時的かつ短期のものであって,国内の居住場所がそのまま確保されており,一定期限の到来とともに同所に戻って生活を継続していくことが予定されている場合等には,生活の本拠は依然として国内の居住地にあるものと解されるところ,同法19条1項1号によれば,当該居住地を所管する福祉事務所を管理する実施機関は,当該要保護者に対し,保護の決定及び実施を行う責任を負うものとされ,国内に居住地を有する要保護者が国外に滞在しているからといって,およそ一律に法による保護の対象にならないということはできないとした上,前記決定について,同法25条2項に規定する保護の変更の必要があったとは認められず,同法56条に規定する正当な理由があったとも認められないとして,前記決定を違法とした事例

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