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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成12(行ウ)211

事件名

 退去強制令書発付処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成15年9月19日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 出入国管理及び難民認定法49条3項に基づき法務大臣がした同条1項の異議申出に対する裁決の,行政事件訴訟法3条3項にいう「裁決」該当性 2 長期間平穏に本邦に在留するイラン・イスラム共和国国籍の者ら家族に対する退去強制令書発付処分が,裁量権を逸脱又は濫用し,比例原則に反する違法なものであるとして,取り消された事例 3 退去強制令書発付処分における主任審査官の裁量権の有無

裁判要旨

 1 出入国管理及び難民認定法49条3項は,法務大臣による裁決の結果は,異議の申出に理由がある場合及び理由がない場合のいずれにおいても,当該容疑者に対してではなく主任審査官に対して通知することとしている上,法務大臣が異議の申出に理由がないと裁決した場合には,法務大臣から通知を受けた主任審査官が当該容疑者に対してその旨を通知すべきこととなっているが,法務大臣が異議の申出に理由があると裁決した場合には,当該容疑者に対しその旨の通知をすべきことを規定しておらず,単に主任審査官が当該容疑者を放免すべきことを定めるのみであって,いずれの場合も,法務大臣がその名において異議の申出をした当該容疑者に対し直接応答することは予定していないという同法の定め方からして,その位置づけとしては退去強制手続を担当する行政機関内の内部的決裁行為と解するのが相当であるから,,同法49条3項に基づき法務大臣がした同条1項の異議申出に対する裁決は,行政庁への不服申立てに対する応答行為としての行政事件訴訟法3条3項の「裁決」には該当しない。 2 長期間平穏に本邦に在留するイラン・イスラム共和国国籍の者ら家族に対して主任審査官がした退去強制令書発付処分が,既に確立した裁量基準において,同人らに有利に考慮すべき長期間平穏に本邦に在留し,その間に素行に問題なくすでに善良な一市民として生活の基盤を築いているという事実を,逆に不利益に考慮して結論を導いている点において裁量権を逸脱又は濫用するものであるし,同人らが本国に帰国した時に受ける不利益と前記処分によって達成される利益との比較において,比例原則にも反する違法なものであるとして,取り消された事例 3 出入国管理及び難民認定法24条は同条各号の定める退去強制事由に該当する外国人については,同法5章に規定する手続により,「本邦からの退去を強制することができる」と定めており,法律の文言が,行政庁を主体として「することができる」との規定をおいている際には,その裁量の内容はともかく,立法者が行政庁にある幅の効果裁量を認める趣旨であると解すべきものであって,同法5章の手続規定においては,主任審査官の行う退去強制令書の発付が,当該外国人が退去を強制されるべきことを確定する行政処分として規定されていると解されることからすれば,退去強制について実体規定である同法24条の認める裁量は,具体的には退去強制に関する上記手続規定を介して主任審査官に与えられ,その結果主任審査官には,退去強制令書を発付するか否か,発付するとしてこれをいつ発付するかにつき,裁量が認められているというべきである。

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