裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成14(行コ)303
- 事件名
行政処分取消請求控訴事件(原審・水戸地方裁判所平成11年(行ウ)第5号)
- 裁判年月日
平成15年9月11日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 県立高校受験に際して受験校に提出された調査書の開示にかかる県個人情報保護審議会の答申に記載された情報が,茨城県公文書の開示に関する条例(昭和61年条例第2号)6条1項3号に規定する「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であつて,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」に該当するとされた事例
2 県立高校受験に際して受験校に提出された調査書の開示にかかる県個人情報保護審議会の答申に記載された情報が,茨城県公文書の開示に関する条例(昭和61年条例第2号)6条1項8号に規定する事務事業情報に該当するとされた事例
3 県立高校受験に際して受験校に提出された調査書の開示にかかる県個人情報保護審議会の答申に記載された情報を全部非開示とした処分が,一部違法とされた事例
- 裁判要旨
1 県立高校受験に際して受験校に提出された調査書の開示にかかる県個人情報保護審議会の答申に記載された情報につき,茨城県公文書の開示に関する条例(昭和61年条例第2号)6条1項3号にいう「特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」については,規定上,当該公文書に記載された情報のみによって特定の個人が現に識別できる情報にとどまらず,当該公文書に記載された情報に他の情報を結びつけることによって,特定の個人が識別できる情報を含むものであると解されるところ,特別の情報を得ることが法律上当然に予想される範囲にある関係者の情報は,結びつけるべき他の情報から除くのが相当であるとした上で,前記調査書の部分開示決定に対する異議申立人が同調査書の開示請求をした当時,県内においては,調査書の開示請求がされたのは,同人からの同一文書に係る2件のみであり,異議申立てについては,同人からの異議申立てしかなかったこと,異議申立人とその母親は,中学校と誤認体罰問題をめぐり数年間にわたり紛争状態となり,調査書の開示請求に至ったこと等の事情に照らせば,特別の情報を得ることが法律上当然に予想されるとはいえない関係者である異議申立人の出身中学校の職員,生徒等の中にも,異議申立人がある時期に調査書の開示請求をしたことを知った者がいたと推認するのが相当であり,そのような者は前記答申が全部開示された場合には,同答申の内容と自己の有する特別な事情から,異議申立人を識別し得るというべきであるとして,前記情報が前記条例6条1項3号に規定する「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であつて,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」に該当するとした事例
2 県立高校受験に際して受験校に提出された調査書の開示にかかる県個人情報保護審議会の答申に記載された情報につき,前記審議会の答申には,個人情報の開示を求める異議申立人の主張やこれに対する実施機関の主張,審議会の判断として,当該異議申立事案における具体的事実に基づいた内容が記載されているところ,同答申が第三者に開示されることになると,異議申立人は自己が識別されたり,他人に知られたくない情報が開示されるのを恐れて,茨城県個人情報の保護に関する条例(平成5年茨城県条例第2号)上の不服申立手続等において率直な意見を主張しにくくなったり,不服申立て事態をちゅちょする事態が生じるおそれがあり,その結果,同条例に基づく個人情報の保護制度という事務事業がその目的を達成できなくなるおそれがあるというべきであるから,前記答申のうち個人識別情報の記載のある情報は,前記条例6条1項8号に規定する事務事業情報に該当するとした事例
3 県立高校受験に際して受験校に提出された調査書の開示にかかる県個人情報保護審議会の答申に記載された情報を全部非開示とした処分につき,前記答申から個人情報識別部分を除いた残りの部分のうち,申立の趣旨,諮問の事実,実施機関意見書の受理の事実等の各記載は,明確な個性がなく,その他の情報との関連性がそれ自体では明らかではないし,文書番号や諮問実施機関の委員長の氏名等の記載は,どの答申にもほほ共通して記載されるものであり,その他の情報と結びつけることもできない性質の情報であることから,これらの記載から特定の異議申立人が識別され得ることはなく,また,これらの記載部分は,ある程度まとまりのある一定の情報という外形を保っており,かつ,このような記載部分をもってするのでは,異議申立人の求めが充足されないことの具体的な立証がされていないから,茨城県公文書の開示に関する条例(昭和61年条例第2号)及び同条例に基づく通達の定める部分開示の要件に欠けることはないとして,前記処分を一部違法とした事例
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