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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成14(行ウ)1等

事件名

 人事異動具申書内申書開示一部不開示処分取消請求事件,損害賠償請求事件

裁判年月日

 平成15年3月18日

裁判所名

 甲府地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 地方教育行政の組織と運営に関する法律に基づき作成された,教職員の人事異動に係る「教職員調査一覧表並びに年度末人事についての意見書」に記載された情報のうち,「出勤状況」,「特技,特能」,「勤務等の状況」,「意見」,「意見に対する説明」の各欄に記載された情報が,山梨県個人情報保護条例14条1項3号所定の不開示事由(事務事業情報)に該当するとされた事例 
2 地方教育行政の組織と運営に関する法律に基づき作成された,教職員の人事異動に係る「内申書」に記載された情報が,山梨県個人情報保護条例14条1項3号及び5号所定の不開示事由(事務事業情報)に該当しないとされた事例

裁判要旨

 1 地方教育行政の組織と運営に関する法律に基づき作成された,教職員の人事異動に係る「教職員調査一覧表並びに年度末人事についての意見書」に記載された情報のうち,「出勤状況」,「特技,特能」,「勤務等の状況」,「意見」,「意見に対する説明」の各欄に記載された情報につき,前記意見書は,人事に係る事務に資することを目的とする文書であって,校長が所属の教職員の任免等に関する意見を市町村教育委員会に申し出るために作成するものであり,前記各欄は,校長が当該職員の任免等の判断に必要な評価や,人事異動の意見及び理由を記載するものであり,いずれも評価又は選考に関する個人情報ということができるところ,その記載には校長の主観的評価,判断が含まれ,記載された情報が開示された場合,その記載内容について紛糾したり,当該教職員が校長に対し反感や不信感を抱いたりするなどして,人事に係る事務の適正かつ円滑な執行に混乱を生ずるおそれがあるばかりか,これによりその後の職務についても支障が生ずることも考えられ,また,当該教職員とともに職務を行い,これを直接監督する立場にある校長が,そのような混乱をおそれて意見書に率直な意見の記載をすることを控え,公平,客観的な評価をしなくなるようになり,ひいては,意見が的確に伝わらない事態が生ずるなどして,意見書が適正かつ円滑な人事に係る事務の資料としての機能を果たさなくなるおそれもあり,かえって教職員の人事に係る事務を不透明にする可能性もあることなどから,前記意見書を開示することによる諸弊害発生のおそれは,それぞれ重大なものであり,人事に係る事務等の適正かつ円滑な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるとして,前記情報は,山梨県個人情報保護条例14条1項3号所定の不開示事由(事務事業情報)に該当するとした事例 
2 地方教育行政の組織と運営に関する法律に基づき作成された,教職員の人事異動に係る「内申書」に記載された情報につき,前記内申書には,選考に関する個人情報が記載されているものといえるが,前記内申書の記載は市町村教育委員会が都道府県教育委員会に対してした当該職員の任免等の内申の結論のみを示すもので,主観的な評価を含むとは言い難く,また,市町村教育委員会は,前記内申書の開示により,当該職員らによって圧力が加えられたとしても組織としての対応が十分可能と考えられ,率直な意見の記載を差し控える等の弊害が生ずるおそれは小さいものといえること,また,前記内申書に記載された情報は,県の機関とその他の機関との間における審議,検討等に関する個人情報であることは認められるが,前記内申書は,市町村教育委員会が教育長の助言を受けて作成したもので,同委員会の確定した意見が記載されているものであり,未成熟な情報ということはできないし,これについて誤解や憶測が生じ,紛糾を招いたとしても,市町村教育委員会又は都道府県教育委員会は組織として十分対応が可能であるといえ,直ちに教職員の人事に係る事務又は将来の同種の事務の適正さが損なわれるとはいえないことなどから,前記情報は,少なくとも当該人事後に開示するのであれば,当該事務に著しい支障が生ずるおそれがあるということはできないとして,山梨県個人情報保護条例14条1項3号及び同項5号所定の不開示事由(事務事業情報)に該当しないとされた事例

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