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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成13(行ウ)4

事件名

 公文書非公開処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成14年11月27日

裁判所名

 奈良地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市の情報公開条例に基づく公文書開示請求に対し,市長がした文書の一部開示決定のうち,異議申立てを欠く部分の取消しを求める訴えが,出訴期間を徒過したものとして不適法であるとされた事例
2 街路事業の買収に伴う鑑定書に記載された情報のうち,標準画地の地番及び取引等事例の指摘図が,生駒市情報公開条例(平成9年12月24日生駒市条例第26号)6条2号本文所定の「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」に当たらないとされた事例
3 街路事業の買収に伴う鑑定書に記載された情報のうち,鑑定評価の総額,単価及び資産価格並びに標準画地の価格が,生駒市情報公開条例(平成9年12月24日生駒市条例第26号)6条7号所定の不開示情報(事務事業情報)に当たらないとされた事例
4 生駒市情報公開条例(平成9年12月24日生駒市条例第26号)に基づき,街路事業の買収に伴う鑑定書の開示を求め,文書の一部非開示処分を受けた者が,当該処分により知る権利ないし情報公開請求権を侵害され,また,異議申立後9か月経ってもそれに対する判断を行わなかったことにより精神的苦痛を受けるとともに,前記処分の取消しを求めるために訴えを提起せざるを得なくなり弁護士費用の出費を余儀なくされたとして,市に対してした損害賠償請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 市の情報公開条例に基づく公文書開示請求に対し,市長がした文書の一部開示決定のうち,異議申立てを欠く部分の取消しを求める訴えにつき,同決定はその内容からみて,開示を求めた各文書を一体のものととらえてされたものではなく,可分的な記載内容ごとに個別に非開示事由の存否を判断してされたものであり,また,異議申立てや訴訟においても,個々の可分的な記載内容ごとに非開示事由の存否が問題とされていたという事情の下では,同決定は,一体のものではなく,個々の文書の可分的な記載内容ごとにされた複数の開示ないし非開示の決定の集合体とみるべきであり,その一部について異議申立てがされて出訴期間の起算点が異議申立時になったとしても,その余の部分については当然に異議申立てを経たことにはならず,出訴期間の起算点についても影響を及ぼすものではないから,前記訴えは,行政事件訴訟法14条1項により,出訴期間を徒過したものとして,不適法であるとした事例
2 街路事業の買収に伴う鑑定書に記載された情報のうち,標準画地の地番及び取引等事例の指摘図につき,生駒市情報公開条例(平成9年12月24日生駒市条例第26号)6条2号本文にいう「個人に関する情報」とは,法的保護に値する個人に関する情報をいうものであるとした上,前記地番及び指摘図は,何人でも閲覧できる不動産登記簿と照合することにより特定の個人が識別され得る情報であるといえるが,これが個人の財産や所得に関する情報であるとしても,あくまでもその一部にすぎず,当該個人の財産や所得の全体を明らかにするものではないし,また,これは市長が当該土地取得のために,不動産鑑定士に作成を依頼し,その不動産鑑定士が調査等を行って作成した不動産鑑定評価書中の記載であって,取引当事者の主観や個別事情に影響されない客観性の高いものであることからすると,個人のプライバシーとして保護する必要性の高い情報であるとまでいえないとして,前記地番及び指摘図は,いずれも当該条例6条2号本文所定の「個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」に当たらないとした事例
3 街路事業の買収に伴う鑑定書に記載された情報のうち,鑑定評価の総額,単価及び資産価格並びに標準画地の価格につき,これらの公開により買収対象不動産の鑑定評価額が明らかになるからといって,市と土地所有者との間の信頼関係が直ちに損なわれるとは直ちにいえないし,また,それだけで土地所有者が市に対して不信感を持ち,未買収地の交渉に支障が生じるとまではいえないこと,買収価格を第三者に知られたくないとの期待は,そのままの形では保護されるべき利益とはいえないから,買収事務担当者としては,土地所有者が後に買収価格が公開される可能性があることを理由として買収に難色を示したとしても,用地買収の公的性質を説明し,説得に努力すべきものであって,このような説得の努力が必要になるからといって,これが事業の円滑な執行に当たっての著しい支障とまでは認めることはできないこと,一定の時点における取得価格等の情報が公開されたとすると,買収事務担当者にとって説明すべき事柄が増えることにはなるとしても,交渉が不成功に終わるということではないことから,前記各情報が著しい支障を及ぼすおそれのある情報であることについての客観的,具体的な裏付けとなる事実が存在するとまでは認められないとして,いずれも前記条例6条7号の著しい支障を及ぼすおそれのある情報には当たらないとした事例
4 生駒市情報公開条例(平成9年12月24日生駒市条例第26号)に基づき,街路事業の買収に伴う鑑定書の開示を求め,文書の一部非開示処分を受けた者が,当該処分により知る権利ないし情報公開請求権を侵害され,また,異議申立後9か月経ってもそれに対する判断を行わなかったことにより精神的苦痛を受けるとともに,前記処分の取消しを求めるために訴えを提起せざるを得なくなり弁護士費用の出費を余儀なくされたとして,市に対してした損害賠償請求につき,前記非開示処分の一部は違法であるが,その非開示事由該当性に関しては解釈上争いがあるところであり,同種の情報公開条例を有する地方公共団体における同種の情報開示請求についても,公開するという扱いが一般に確立しているわけではなく,現に実務の取扱いも事案によって分かれていることからは,市長が前記処分を行ったことについて故意又は過失があったとは認められず,また,市長は審査会に対し,原告の異議申立てから2日後に諮問を行っていることからすれば,市長の異議申立てに対する決定が不当に遅延していたとは認められないとして,前記請求が,棄却された事例

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