裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成13(行コ)5
- 事件名
酒類販売場移転許可処分取消請求控訴事件(原審・松江地方裁判所平成12年(行ウ)第4号)
- 裁判年月日
平成14年9月20日
- 裁判所名
広島高等裁判所 松江支部
- 分野
行政
- 判示事項
1 酒類販売場移転許可処分の取消しを求める訴えにつき,移転先近隣の既存の酒類販売業者の原告適格が否定された事例
2 酒類販売場移転許可処分の取消しを求める訴えにつき,移転先近隣の既存の酒類業組合の原告適格が否定された事例
- 裁判要旨
1 酒類販売場の移転許可処分の取消しを求める訴えにつき,酒類業組合の組合員は,処分の名宛人ではなく,既存の酒類販売業者であり,酒税法に基づく免許,許可制度に関する諸規定は,酒税の確実な徴収とその税負担の消費者への円滑な転嫁を確保する必要という専ら財政目的の見地から採用されたものであって,酒類の製造場,販売場の移転許可制度を定めた同法16条の規定も前記財政目的の見地から規定されたものにほかならず,同条に基づく処分の名宛人以外の近隣における既存の酒類販売業者の営業の安定等の個別的利益あるいは酒類業組合の事業の安定までも法律上保護したものではないから,処分の取消しにより,前記組合員が利益を受けることがあったとしても,それは,法律上保護された利益ではなく,反射的利益ないし事実上の利益にすぎないとして,移転先近隣の既存の酒類販売業者の原告適格を否定した事例
2 酒類販売場の移転許可処分の取消しを求める訴えにつき,酒類業組合は処分の名宛人ではなく,また,酒類業組合の制度は,そもそも酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(以下「組合法」という。)が酒税徴収補助の見地から設けたものであり,組合法の酒類業組合による自主的な規制に関する諸規定も,酒類業界の安定それ自体を直接保護しようとするものではなく,酒類業界の安定を通じての酒税の確実な徴収を確保しようとするものであると解されること,組合法の全規定をみても,酒類業組合が,酒税法に基づくいかなる処分に対しても,意見を述べたり,承諾を与えるような規定はなく,組合法制定の趣旨にかんがみても,組合法が,酒類業組合に,行政機関の違法な措置を是正するという権能を付与したとの趣旨を読みとることはできないことなどから,酒類販売業者の販売上の移転が許可されないことによって酒類業組合が得る利益は,酒税法はもとより,組合法によっても,その保護された個別的利益とはいえず,酒税の徴収確保という財政目的から設けられた酒類販売業免許制度による反射的利益ないし事実上の利益にすぎないから,前記組合には,行政事件訴訟法9条に定める処分の取消しを求めるについての「法律上の利益」がないとして,移転先近隣の既存の酒類業組合の原告適格を否定した事例
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