裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成13(行ク)143
- 事件名
執行停止申立事件
- 裁判年月日
平成13年12月27日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
在留期間を過ぎて本邦に不法残留していたとして,退去強制令書発付処分を受けた韓国人がした,同処分の取消しを求める訴えを本案とする同処分の執行停止の申立てが,同令書に基づく収容部分の執行も含め,認容された事例
- 裁判要旨
在留期間を過ぎて本邦に不法残留していたとして,退去強制令書発付処分を受けた韓国人がした,同処分の取消しを求める訴えを本案とする同処分の執行停止の申立てについて,行政事件訴訟法25条2項の「回復の困難な損害」とは,処分を受けることによって被る損害が,原状回復又は金銭賠償が不能であるとき,若しくは金銭賠償が一応可能であっても,損害の性質,態様にかんがみ,損害がなかった原状を回復させることが社会通念上容易でないと認められる場合をいうところ,前記退去強制令書に基づく収容の執行により前記韓国人が被る損害は,収容による身柄拘束を受けることであるが,身柄拘束自体が個人の生命を奪うことに次ぐ人権に対する重大な侵害であり,精神的,肉体的に重大な損害をもたらすものであって,その損害を金銭によって償うことは社会通念上容易でないというべきである上,同人の日本人妻との婚姻関係や妻の子との関係に回復し難い悪影響が及ぶ可能性もあり,これによって生じる損害は社会通念上損害がなかった原状に回復させることが容易でない損害と認められ,その損害が処分そのものや法が当然予定したものであったとしても,その損害を被ることによって本案訴訟の勝訴判決が実効性を持たない可能性がある場合には執行停止の必要性を肯定すべきであるとし,また,同令書に基づく送還の執行により前記韓国人が回復困難な損害を被るものと認められるとし,さらに,同令書の発付処分について,主任審査官には出入国管理及び難民認定法第5章の規定を介して退去強制令書を発付するか否か,いつこれを発付するかにつき裁量が認められ,併せてその権限行使は公共の安全と秩序を維持するため必要最小限度にとどめるべきとの規範も与えられているというべきであるから,同令書の発付処分の取消等を求める訴訟において,退去強制事由の有無に加えて前記主任審査官の裁量の逸脱又は濫用及び前記規範違反についても同処分の違法事由として主張し得るところ,前記韓国人は同令書の発付時点において,実質的には「日本人の配偶者等」としての在留活動があったものということができ,主任審査官は,前記韓国人を在留させた場合における本邦への弊害を過大評価していた疑いがある上,同人ひいては同人の日本人妻にいかなる損害が生ずるかについての考慮を欠いていた可能性も否定できず,その判断過程には社会通念に照らし著しい過誤欠落があった可能性が高く,またその判断が前記規範に反する可能性も高いことから,行政事件訴訟法25条3項の「本案について理由がないとみえるとき」に該当するとは認められず,かつ同項の「公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき」に該当する事情もないとして,前記執行停止の申立てを,収容部分の執行を含め,認容した事例
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