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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成13(行ク)114

事件名

 執行停止申立事件

裁判年月日

 平成13年11月6日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 難民認定申請をしていたアフガニスタン国籍を有するハザラ人がした,同人に対する収容令書発付処分の取消しを求める訴えを本案とする同処分の執行停止の申立てが,認容された事例

裁判要旨

 難民認定申請をしていたアフガニスタン国籍を有するハザラ人がした,同人に対する収容令書発付処分の取消しを求める訴えを本案とする同処分の執行停止の申立てにつき,主任審査官が出入国管理及び難民認定法39条に規定する収容令書の発付を行うに際しては,同条所定の要件に加え,対象者が難民に該当する可能性を検討し,その可能性がある場合においては,同人が難民に該当する蓋然性の程度や同人に対し移動の制限を加えることが難民の地位に関する条約(難民条約)31条2項に照らし必要なものといえるか否かを検討する必要があるとした上,同人は人種,宗教,政治的意見等から迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいるものであってその国籍国の保護を受けることができないものであり,同人に同条所定の難民に該当する一定程度の蓋然性を認め,その蓋然性との比較において,収容令書の発付及び執行という方法を用いてまで移動の制限の必要性があったとは認めがたいものであるため,前記処分は出入国管理及び難民認定法39条及び難民条約31条2項に反する違法なものとなる可能性が十分存するから,行政事件訴訟法(平成16年法律第84号による改正前。以下同じ。)25条3項の「本案について理由がないとみえるとき」に該当するとは認められず,かつ同項の「公共の福祉に重大な損害を及ぼすおそれがあるとき」に該当する事情もないとし,次いで,同法25条2項の「回復の困難な損害」とは,処分を受けることによって被る損害が,原状回復又は金銭賠償が不能であるとき,若しくは金銭賠償が一応可能であっても,損害の性質,態様にかんがみ,損害がなかった原状を回復させることが社会通念上容易でないと認められる場合をいうとした上,収容による身体拘束はそれ自体個人の人権に対する重大な損害であるが,特に難民認定申請者の場合には,収容により,難民認定を受けるための活動や他の国への入国許可を受けるための活動が阻害されるおそれが否定できず,また,収容により受ける精神的,肉体的ダメージが難民認定手続における同人の活動に何らかの悪影響を与え,難民認定が受けられなくなる可能性もないとはいえず,これらの不利益によって生ずる損害は社会通念上原状を回復させることが容易でない損害であると認められるとして,前記執行停止の申立てを認容した事例

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