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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成6(行ウ)208

事件名

 平成6年(行ウ)第208号 小田急線連続立体交差事業認可処分取消請求事件(以下「甲事件」という。)平成6年(行ウ)第288号 事業認可処分取消請求事件(以下「乙事件」という。)

裁判年月日

 平成13年10月3日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 都市計画法59条2項に基づき建設大臣がした都施行の都市計画都市高速鉄道事業認可及び都市計画道路事業都市高速鉄道事業付属街路事業認可の各取消しを求める訴えにつき,前記附属街路事業認可に係る事業地内の不動産に権利を有する者の前記各認可全体についての取消しを求める原告適格を肯定し,前記各事業認可に係る事業地の不動産につき権利を有すると認められない者の原告適格を否定した事例 2 都市計画法59条2項に基づき建設大臣がした都施行の都市計画都市高速鉄道事業認可及び都市計画道路事業都市高速鉄道事業付属街路事業認可の取消請求が,いずれも認容された事例

裁判要旨

 1 都市計画法59条2項に基づき建設大臣がした都施行の都市計画都市高速鉄道事業認可及び都市計画道路事業都市高速鉄道事業付属街路事業認可の各取消しを求める訴えにつき,都市計画事業の認可が告示されると,当該事業地内の土地の形質の変更等について同法65条等に定める制約等の法的効果が生じ,また,前記認可をもって土地収用法20条の規定による事業の認定に代え,前記認可の告示をもって同法26条1項の規定による事業認定の告示とみなした上,都市計画事業を同法の事業に該当するものとみなして同法の手続により土地の収用,使用をすることができるものとされている各規定によれば,都市計画事業の事業地内の不動産に権利を有する者は,違法な認可がされれば,それによって自己の権利を侵害され又は侵害されるおそれが生ずることとなるから,都市計画法59条以下の認可の手続,要件等を定めた規定は,都市計画事業の事業地内の不動産につき権利を有する者個々人の利益をも保護することを目的とした規定と解することができ,事業地内の不動産につき権利を有する者は,前記認可の取消しを求める原告適格を有するが,事業地の周辺地域に居住し又は通勤,通学するにとどまる者については,認可によりその権利若しくは法律上保護された利益が侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあると解すべき根拠は認められないとした上,鉄道に沿って住宅地が連続している区間において鉄道を高架化する場合には,日照阻害の問題が生ずることを防ぐ必要があり,高架施設に沿って付属街路を設置することが必要不可欠である一方で,高架施設を前提としない道路としての付属街路自体で都市計画施設たる「道路」としての独立した存在意義を有するものとして設計されるものではないから,付属街路を設置する事業だけでは独立した都市計画事業としての意味を持たないものであるということができ,付属街路に係る都市計画は,主たる都市計画事業である鉄道の高架化事業に付随する従たるものというべきであり,前記鉄道事業に係る都市計画と前記各付属街路事業に係る各付属街路都市計画とは,形式的には異なる都市計画ではあるけれども,その実体的適法性を判断するに当たっては,両者があいまって初めて一つの事業を形成するという実質から一体のものとして評価するのが相当であるとして,前記の各認可に係る事業の対象土地全体を一個の事業地と考え,同事業地の不動産に権利を有する者につき一体としての前記各事業認可の取消しを求める原告適格を肯定し,前記事業地の不動産につき権利を有すると認められない者の原告適格を否定した事例 2 都市計画法59条2項に基づき建設大臣がした都施行の都市計画都市高速鉄道事業認可及び都市計画道路事業都市高速鉄道事業付属街路事業認可の取消請求につき,都市計画事業認可が適法であるというためには,同法61条の定める各要件を満たすことが必要であるとともに,同認可は,適法な都市計画決定又は変更決定がされていることを前提としてその上に積み重ねられる手続であるから,都市計画決定が適法であることも必要であるとした上,前記鉄道事業認可については,同認可申請における事業地の範囲として,前記鉄道事業の一部である工事を行う地域が含まれておらず,前提となる都市計画決定における事業地の範囲とも一致していないのに,これらを看過して認可がされたこと,及び事業施工期間の判断にも不合理な点があることから,都市計画法61条に適合せず,また,都市計画の変更決定があった場合,変更された部分が一部であったとしても,それは当該都市計画全体について総合的な見直しがされた結果にすぎず,変更後の都市計画は変更された部分のみならず,全体として新たな都市計画となるものと解するのが相当であるから,前記鉄道事業認可の前提として違法性の判断の対象となる都市計画は平成5年変更決定に係る都市計画決定であるとした上,同変更決定については,前記事業に係る鉄道は,騒音の点において違法な状態を現出させているとの疑念をもたれていたのであるから,新たに都市計画を定めるに当たってはこの点を第一に検討すべきであったのに,騒音解消の検討や都市計画によって騒音問題を解消しようとの視点を欠いている点で,その考慮要素に著しい欠落があったというべきであり,また,事業費の算出に当たって,より慎重な検討を行えば,地下式と高架式との差は当時都が予想していたほどのものではない可能性が十分あったにもかかわらず,高架式が有利であるとの前提で検討を行ったことなどの点で,その判断内容にも著しい過誤があったというべきであるから,前記変更決定は,都にゆだねられた裁量権の範囲を逸脱して違法であるとし,同各事業認可が取り消されても,これにより既にされた工事について原状回復の義務等の法的効果が発生するものではなく,その他同各事業認可の取消しにより公の利益に著しい障害を生ずるものとは認められないから,行政事件訴訟法31条1項により請求を棄却すべき場合であるとは認められないとして,前記請求をいずれも認容した事例

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