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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成9(行ウ)15

事件名

 損害賠償等請求事件

裁判年月日

 平成13年8月8日

裁判所名

 奈良地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 中央官庁の職員,全国知事会の職員,他の都道府県の職員,青果市場役員等の民間人(企業)を相手方とする懇談等に伴う食糧費並びに県東京事務所職員の昼食代及び残業夜食代の支出が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同事務所長及び同次長に対してされた損害賠償請求が,認容された事例 2 県東京事務所長及び同次長が中央官庁の職員等を相手方とする懇談等に食糧費名目で公金を支出したことが違法であるにもかかわらず,同人らに対する同支出相当額の損害賠償請求権の行使を怠っていることが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,知事に対してされた怠る事実の違法確認請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 中央官庁の職員,全国知事会の職員,他の都道府県の職員,青果市場役員等の民間人(企業)を相手方とする懇談等に伴う食糧費並びに県東京事務所職員の昼食代及び残業夜食代の支出が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,同事務所長及び同次長に対してされた損害賠償請求につき,普通地方公共団体の執行機関が,当該団体の事務を遂行し対外的折衝や意見交換等を行う過程において,社会通念上儀礼の範囲にとどまる程度の接遇を行うことは許容されるべきであり,その費用を公金から支出することも許されると解すべきであるが,前記支出が食糧費からされている場合には,行政事務等の執行上直接に費消される経費であるという食糧費の性質にかんがみ,行政事務等の存在が明確にされるとともに前記支出と事務執行との間に直接的な関連性が認められることをも要するとした上,中央官庁の職員を相手方とする懇談等に伴う食糧費の支出は,県職員と中央官庁職員との意見交換や情報収集の場として実施されたものであれば,当該懇談を実施することが,その内容,目的,効果に照らし有益であると認められ,かつ,これに要した費用が社会通念上相当な範囲内にとどまる限り,当該費用を食糧費から支出したことに違法はないが,前記範囲を超える場合には,支出担当職員の裁量権を逸脱する違法なものと解すべきであるが,前記相当性の判断に際し,懇談等の相手方が中央官庁職員である場合には,本来,当該国家公務員である職員が,職務に関し,最も厳正な倫理を要求される立場にあるという特質から,接遇する側における前記相当性の判断も厳格さが要求されているところ,前記中央官庁職員に関する支出は,すべて社会通念上も相当な範囲を超えており,予算執行権限を有する財務会計職員の裁量を逸脱し,違法であり,前記全国知事会の職員を相手方とする飲食については,飲食の際に具体的な情報交換等がされた資料が認められず飲食そのものが目的であり社会通念上も相当の範囲を超える違法な支出であり,青果市場役員等の民間人を相手方とする飲食提供も社会通念上相当な範囲を超え,違法な支出であり,さらに,地方自治法は,「給料,手当及び旅費の額並びにその支給方法」は,条例で定めなければならないとし,いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには職員に支給できない旨規定しており,法令上の根拠に基づかずに職員に対し財産的「給付」をすることが許されないが,前記事務所職員の昼食代及び残業夜食代を支出することは県条例上の職員への給付を定めた根拠に基づかない支出であり,支出すること自体が,金額の多寡を問わず違法であるとして,前記請求を認容した事例 2 県東京事務所長及び同次長が中央官庁の職員等を相手方とする懇談等に食糧費名目で公金を支出したことが違法であるにもかかわらず,同人らに対する同支出相当額の損害賠償請求権の行使を怠っていることが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,知事に対してされた怠る事実の違法確認請求につき,前記支出は社会通念上相当の範囲を超える等の違法な支出であり,前記所長及び同次長は県に対して損害賠償義務を負うところ,知事は県を統括し代表するとともに予算の執行,会計の監督等の事務を担任し,県執行機関及び県職員に対し包括的な指揮監督権限を有する者であるから,前記損害賠償金を県に返還させる義務があり,当該義務の履行を怠っていることが違法であるとして,前記請求を認容した事例

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