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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成8(行コ)1

事件名

 職員給与支出差止等請求控訴事件(原審・岡山地方裁判所平成4年(行ウ)第9号)

裁判年月日

 平成13年6月28日

裁判所名

 広島高等裁判所  岡山支部

分野

 行政

判示事項

 1 県が第三セクター方式の会社に対して職員を派遣し,同職員に対して給与等を支給することが違法な公金の支出に当たるとして,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,知事に対して提起された前記給与等の支払の差止めを求める訴えが,不適法とされた事例 2 県が第三セクター方式の会社に対して,職務専念義務を免除した上で職員を派遣し,同職員に給与等を支給したことが違法な公金の支出に当たるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,県知事個人に対してされた損害賠償請求が,棄却された事例 3 第三セクター方式の株式会社に対し,県が職務専念義務を免除した上で職員を派遣し,同職員に給与等を支給したことが違法な公金の支出に当たるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記会社に対してされた不当利得返還請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 県が第三セクター方式の会社に対して職員を派遣し,同職員に対して給与等を支給することが違法な公金の支出に当たるとして,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,知事に対して提起された前記給与等の支払の差止めを求める訴えにつき,平成12年に制定された「公益法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律」(平成12年法律第50号)の内容に照らすと,同法が施行される平成14年4月1日以降,知事が前記会社に県職員を派遣するとは考えられず,またそれ以前にも前記知事が前記会社に派遣した県職員に対して給与等を支給することが相当の確実さをもって予測されるということはできないとして,前記訴えを不適法とした事例 2 県が第三セクター方式の会社に対し,職務専念義務を免除した上で職員を派遣し,同職員に給与等を支給したことが違法な公金の支出に当たるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,県知事個人に対してされた損害賠償請求につき,営利を目的とする前記会社の業務と県の行政目的との間に将来にわたって生じないとはいえない齟齬を回避するための手当が十分ではなく,また,前記職員は県の行政目的とは関連のない前記会社固有の業務に従事していたことからすると,県の行政目的達成のために前記職員を派遣することの公益上の必要があったとはいえないなどの理由から,少なくとも県知事のした前記職員に対する職務専念義務の承認は,県の行政目的達成のためにする公益上の必要性がなかったので地方公務員法24条1項,30条及び35条の趣旨に反する違法なものであることになり,したがって前記職員は,派遣期間中,県の事務に従事しておらず,これにつき,適法な承認を得ていたとはいえないから,前記給与支給は違法というべきであるが,この点につき明確な判例学説もなく,実務上の取扱いも分かれていたことからすれば,県知事において前記承認を適法と判断したことをもって直ちに過失があったということはできないとして,前記請求を棄却した事例 3 第三セクター方式の株式会社に対し,県が職務専念義務を免除した上で職員を派遣し,同職員に給与等を支給したことが違法な公金の支出に当たるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前記会社に対してされた不当利得返還請求につき,前記会社と県との間の職員派遣協定は,県知事がした違法な職員の職務専念義務の免除についての承認を前提として,県が勤務しない派遣職員対して給与を支給するという違法なものであり,その違法事由は,地方公務員の服務や給与等についての基本的な義務を定めた地方公務員法に反するという重大なものであり,前記職員派遣協定中,県が給与を支給する旨の部分は私法上も無効というべきであるから,前記会社は法律上の原因なくして,無償で前記派遣職員の労務の提供を受け,その給与相当額の利得を得,県は同額の損失を被ったものというべきであるとして,前記請求を認容した事例

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