裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成10(行コ)11

事件名

 損害賠償請求控訴事件(原審・山口地方裁判所平成6年(行ウ)第3号(第一事件)、同第5号(第二事件))

裁判年月日

 平成13年5月29日

裁判所名

 広島高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 市が,営業を一切しておらず,かつ,これを再開する可能性が全くなかった第三セクター方式の会社に対して補助金を交付したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,元市長個人に対してされた損害賠償請求が,一部認容された事例

裁判要旨

 市が,営業を一切しておらず,かつ,これを再開する可能性が全くなかった第三セクター方式の会社に対して補助金を交付したことが違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,元市長個人に対してされた損害賠償請求につき,補助金交付の要件である公益上の必要性に関する判断に当たっては,地方公共団体の長に一定の裁量権があるものと解されるが,地方自治法232条の2が公益上の必要性という要件を課した趣旨は,恣意的な補助金等の交付によって当該地方公共団体の財政秩序を乱すことを防止することにあると解される以上,その裁量権の範囲には一定の限界があり,その裁量権の逸脱又は濫用があったと認められる場合には,当該補助金の交付は違法と評価されることになるものと解されるところ,その逸脱又は濫用があったか否かは,当該補助金交付の目的,趣旨,効用及び経緯,補助の対象となる事業の目的,性質及び状況,当該地方公共団体の財政の規模及び状況,議会の対応,地方財政にかかる諸規範等の諸般の事情を総合的に考慮した上で検討することが必要であるとした上,前記会社と汽船会社との間の裸傭船契約の合意解除に伴う清算金に関する補助金交付については,前記市が当初参画に消極的であった同汽船会社から協力を得るため,傭船料等の支払に問題が起きたときは同市が責任を持って解決に努力する旨の確約書を交付していたという経緯があり,同市がこの確約を反故にすると市政に対する社会的信頼を失墜しかねず,このような信頼を保持する目的で行ったものであることなどから,同補助金交付に公益性があるとした前記市長の判断に裁量権の濫用又は逸脱は認められないが,前記会社の金融機関からの借入金に関する補助金交付については,同借入れの際,同市の総務部長が,同市が責任を持って対処するので迷惑をかけない旨告げて前記会社の取締役らに連帯保証を求めた経緯があったとしても,連帯保証人となった以上は法的には全面的な支払義務を負うことは当然であり,同会社及び同市の担当者において,前記金融機関との間で真摯な減額交渉をすれば相応の一部弁済で合意できた可能性があったにもかかわらず,そのような交渉をしなかったなどの事情から,同補助金交付に公益性があるとした前記市長の判断には裁量権の逸脱があったとして,前記請求の一部を認容した事例

全文