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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成12(行ケ)265

事件名

 選挙無効請求事件

裁判年月日

 平成13年4月25日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りの基準を定める衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条並びに同区割りを定める公職選挙法(平成6年法律第2号,同第10号及び同第104号)13条1項及び別表第一が,憲法の規定する投票価値の平等の要請に反するとは認められないとされた事例 2 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に候補者本人のする選挙運動とは別に,選挙運動を認める公職選挙法の規定が,憲法14条1項,15条,21条,43条1項に違反するとはいえないとされた事例

裁判要旨

 1 衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りの基準を定める衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条並びに同区割りを定める公職選挙法(平成6年法律第2号,同第10号及び同第104号)13条1項及び別表第一につき,選挙区割りを決定するに当たっては,議院一人当たりの選挙人数又は人口ができる限り平等に保たれることが,最も重要かつ基本的な基準であるが,国会はそれ以外の諸般の要素をも考慮することができるのであって,都道府県は選挙区割りをするに際して無視することができない基礎的な要素の一つであり,人口密度や地理的状況等のほか,人口の都市集中化及びこれに伴う人口流出地域の過疎化の現象等にどのような配慮をし,選挙区割りや議院定数の配分にこれらをどのように反映させるかという点も,国会において考慮することができる要素というべきであることからすると,これらの要素を総合的に考慮して衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条1項,2項のとおり区割りの基準を定めたことが投票価値の平等との関係において国会の裁量の範囲を逸脱するということはできず,公職選挙法13条1項及び別表第一の選挙区割りは,衆議院議員選挙区画定審議会設置法3条1項,2項の基準に従って定められたものであるところ,その結果,選挙区間における人口の最大較差は,平成2年10月に実施された国勢調査による人口に基づけば1対2.137であり,当該選挙の直近の同7年10月に実施された国勢調査による人口に基づけば1対約2.309であったというのであるから,このような区割りが直ちに同項の基準に違反するとはいえないし,前記のとおり同条の定める基準自体に憲法に違反するところがあるとはいえないから,前記較差が示す選挙区間における投票価値の不平等は,一般に合理性を有するとは考えられない程度に達しているとまではいうことはできないとして,前記各規定は憲法の規定する投票価値の平等の要請に反するとは認められないとした事例 2 衆議院小選挙区選出議員の選挙において候補者届出政党に候補者本人のする選挙運動とは別に,自動車,拡声機,文書図画等を用いた選挙運動や新聞広告,演説会等を行うことができるほか,候補者本人はすることができない政見放送をすることを認める公職選挙法の規定につき,同法における候補者届出政党の要件は,国民の政治的意思を集約するための組織を有し,継続的に相当な活動を行い,国民の支持を受けていると認められる政党等が,小選挙区選挙において政策を掲げて争うにふさわしいものであるとの認識の下に,政策本位,政党本位の選挙制度をより実効あらしめるために設けられたと解され,そのような立法政策を採ることには相応の合理性が認められ,これが国会の裁量権の限界を超えるということはできず,候補者と並んで候補者届出政党にも選挙運動を認めることが是認される以上,候補者届出政党に所属する候補者とこれに所属しない候補者との間に選挙運動の上で差異を生ずることは避け難いところであるから,その差異の不当さが一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度の著しいものに達している場合に,初めてそのような差異を設けることが国会の裁量の範囲を逸脱するというべきであるとした上,同法の規定する自動車,拡声機,文書図画等を用いた選挙運動や新聞広告,演説会等についてみられる選挙運動上の差異は,候補者届出政党にも選挙運動を認めたことに伴って不可避的に生ずるということができる程度のものであり,候補者届出政党に所属しない候補者も,自ら自動車,拡声機,文書図画等を用いた選挙運動や新聞広告,演説会等を行うことができるのであって,それ自体が選挙人に政見等を訴えるのに不十分であるとは認められないから,それが国会の裁量の範囲を超えているとは認めがたく,政見放送については,選挙運動の一部を成すに過ぎず,その余の選挙運動については候補者届出政党に所属しない候補者も十分に行うことができるのであって,その政見等を選挙人に訴えるのに不十分とはいえないことに照らせば,政見放送が認められないことの一事をもって,選挙運動に関する規定における候補者間の差異の不当さが一般的に合理性を有するとは到底考えられない程度の著しいものに達しているとまでは断定しがたく,これをもって国会の合理的裁量の限界を超えているということはできないとして,前記規定が,憲法14条1項,15条,21条,43条1項に違反するとはいえないとした事例

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