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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成13(行ス)12

事件名

 執行停止決定に対する抗告事件(原審・東京地方裁判所平成12年(行ク)第111号)

裁判年月日

 平成13年4月20日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 区長が,特定の宗教団体の信者からの転入届をいったん受理し,住民票に所定事項を記載してこれを調整し,住民基本台帳に記録した後,同記録をすべて抹消するため,同信者の住民票を破棄し,住民基本台帳から記録を抹消した行為は住民票消除処分に該当するとして,前記信者が前記区長に対してした同処分の効力停止を求める申立てに,法律上の利益があるとした事例 2 区長が,特定の宗教団体の信者からに転入届をいったん受理し,住民票に所定の事項を記載して,これを調整し,住民基本台帳に記録した後,同記録をすべて抹消するため,同信者の住民票を破棄し,住民基本台帳から記録を抹消した行為は,住民票消除処分に該当するとして,前記信者が前記区長に対してした同処分の執行停止の申立てが,「回復の困難な損害を避けるための緊急の必要」が認められず,又は,「本案について理由がないとみえるとき」に当たるとして,却下された事例

裁判要旨

 1 区長が特定の宗教団体の信者からの転入届をいったん受理し,住民票に所定事項を記載してこれを調整し,住民基本台帳に記録した後,同記録をすべて抹消するため,同信者の住民票を破棄し,住民基本台帳から記録を抹消した行為は住民票消除処分に該当するとして,前記信者が前記区長に対してした同処分の効力停止を求める申立てにつき,市区町村長が住民票を調整し住民基本台帳に記録することは,公の権威をもって住民の居住関係に関する事項を証明し,それに公の証拠力を与える公証行為であるが住民基本台帳に記録されていることが選挙人名簿への登録要件とされていることから,行政処分の性質を有するものと解され,また,同記録の是正は法令に定められた方法によるべきであり,住民基本台帳法8条,14条1項,同法施行令8条等に基づいた消除以外の方法によることは認められないとした上,前記区長の行為は,法律的にはこの消除処分として行われたものと評価するほかなく,行政処分と解されるとして,前記申立てに法律上の利益があるとした事例 2 区長が,特定の宗教団体の信者からに転入届をいったん受理し,住民票に所定の事項を記載して,これを調整し,住民基本台帳に記録した後,同記録をすべて抹消するため,同信者の住民票を破棄し,住民基本台帳から記録を抹消した行為は,住民票消除処分に該当するとして,前記信者が前記区長に対してした同処分の執行停止の申立てにつき,区長は,住民基本台帳法による届出があったときは,当該届出の内容が真実であるかどうかを審査したうえで,住民票の記載等を行わなければならないとされている(同法施行令11条)ことにより,当該届出が違法,不当な目的のための作為的なものでないかどうかといった事柄につき審査する実質的審査権を有しているものと解され,同審査権の意義も,単に届出事項の内容が事実に合致しているかどうかを審査するためだけではなく,当該届出をした者に関し,地域の秩序を破壊し,住民の生命や身体の安全を害する危険性が高度に認められるといった特別の事情の存否についても,必要な審査,判断を行うことができるものと解するべきとした上,前記の転入届は,区長の前記実質的審査権の行使を妨げる意図,目的のもと,不当な方法によって行われたものであって,これに基づいていったんされた住民基本台帳の記録は本来必要とされる実質的審査を経ていないから保護されるべきものとはいえず,記録から除かれるべきであり,住民基本台帳法施行令8条の「住民基本台帳の記録から除くべき事由が生じたとき」に準じて消除されるべきものと解すべきであるから,その消除によって本来保護されるべき正当な利益が侵害されるとは認められないから,「回復の困難な損害を避けるための緊急の必要」が認められず,又は,「本案について理由がないとみえるとき」に当たるとして,却下された事例

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