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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成12(行コ)199

事件名

 損害賠償代位請求控訴事件(原審・浦和地方裁判所平成10年(行ウ)第16号,同年(行ウ)第17号)

裁判年月日

 平成13年2月22日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市の納税課職員が市民税の徴収権を時効消滅させて市民税の徴収を違法に怠ったことについて同職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を怠っていたとして,前記市の議員により,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき提起された市長個人に対する損害賠償請求の訴えが,監査請求期間を徒過し,徒過したことにつき正当な理由もないとして,却下された事例
2 市の納税課職員が市民税の徴収権を時効消滅させて市民税の徴収を違法に怠ったことについて同職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を怠っていたとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき市長個人に対してされた損害賠償請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 市の納税課職員が市民税の徴収権を時効消滅させて市民税の徴収を違法に怠ったことについて同職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を怠っていたとして,前記市の議員により,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前。以下同じ。)242条の2第1項4号に基づき提起された市長個人に対する損害賠償請求の訴えにつき,同訴えは,前記徴収権の不行使ないし管理懈怠を違法として監査請求及び損害賠償の請求をしているものであるから,この不行使ないし管理懈怠につき,同法242条2項本文に定める「終わったとき」とは,いずれも各市民税の徴収権が消滅時効により消滅したことによって行使ないし管理の余地がなくなった時点と解するのが相当であるが,前記職員が当該滞納者に対して発送した催告書が到達した日から6か月を経過するまでの間は,民法153条所定の措置をとって消滅時効の完成を防止することができたのであって,同期間を経過した日が「怠る事実」の終わった日と解すべきであるから,前記監査請求はその監査請求期間を経過しており,また,市議会本会議において前記滞納者の市民税に関する不納欠損処理の事実に関する質問がされ,市議会事務局が発行した市議会だよりに同質問の内容が掲載されたころには,相当な注意力を有する一般市民にそのことが知り得る状況となったというべきであり,相当な注意力をもってすれば,そのころから遅くとも2か月後までには監査請求を行うことができたというべきであるから,それを徒過してされた前記監査請求は,監査請求期間を徒過したことについて地方自治法242条2項ただし書所定の「正当な理由」がないとして,前記訴えを却下した事例
2 市の納税課職員が市民税の徴収権を時効消滅させて市民税の徴収を違法に怠ったことについて同職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を怠っていたとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき市長個人に対してされた損害賠償請求につき,前記職員は,当該市民税の滞納者には地方税法331条1項1号に該当する事由が存在するから,同人の資産を調査して,同人の不動産を差し押さえ,前記市民税の徴収権を保全しなければならなかったというべきであるとした上,前記市長は市民税の徴収事務については,滞納処分による差押えをする場合に決裁するほかは,これを個々の職員に任せており,滞納者の個別的な状況等について,職員からほとんど報告を受けていなかったというのであり,前記市長が徴収事務担当の職員から市民税の滞納状況等について特別に事情説明を求めたり,滞納者に関する情報について報告を受けたり,同情報が自らに伝達されるような態勢を確立するなどして,市民税の徴収を怠らないように適正な指導監督を行っていたと認めることはできないから,前記市長が前記職員による前記市民税の徴収の懈怠を阻止し得なかったことには重大な過失が認められるとして,前記損害賠償請求を認容した事例

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