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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成12(行ウ)6

事件名

 公文書一部非公開決定処分取消請求,公文書非開示処分取消請求事件

裁判年月日

 平成12年12月20日

裁判所名

 奈良地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 知事の交際費に係る公文書のうち,使途の種別として慶祝,弔慰,お見舞い,会費,賛助が記載された前途資金現金出納簿,交際費執行伺書及び領収書などの添付書類中の個人である相手方が識別できる部分が,奈良県情報公開条例10条2号に非開示事由として規定する個人情報に当たらないとされた事例 2 知事の交際費に係る公文書に記載された債権者の振込先銀行名及び口座番号が,奈良県情報公開条例10条3号に非開示事由として規定する法人等情報に当たらないとされた事例 3 知事の交際費に係る公文書のうち,使途の種別として慶祝,弔慰,お見舞い,会費,賛助が記載された前途資金現金出納簿,交際費執行伺書及び領収書などの添付書類中の個人である相手方が識別できる部分が,奈良県情報公開条例10条8号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たらないとされた事例 4 知事の交際費に係る支出命令書に記載された資金前途職員の口座振替先の銀行名及び口座番号が,奈良県情報公開条例10条2号に非開示事由として規定する個人情報に当たらないとされた事例 5 知事の交際費に係る公文書のうち,債権者からの請求書及び領収書に記載された債権者の従業員の氏名及び印影が,奈良県情報公開条例10条2号に非開示事由として規定する個人情報に当たるとされた事例

裁判要旨

 1 知事の交際費に係る公文書のうち,使途の種別として慶祝,弔慰,お見舞い,会費,賛助が記載された前途資金現金出納簿,交際費執行伺書及び領収書などの添付書類中の個人である相手方が識別できる部分につき,奈良県情報公開条例10条2号に非開示事由として規定する個人情報とは,プライバシー保護の観点から法的保護に値する個人情報に限られるとした上,葬儀,お祝い,お見舞いに係る相手方記載部分は,支払を受けた相手方において支払を受けた相手方が,その事実を知られたくないと望むことは考えられず,仮に望んだとしてもそれが正当なものとは解し難く,また,知事交際費からの支出であることから純粋な私的関係に基づくものとは言えなくなり,県民の監視の対象となることを容認すべきであるとして,前記個人情報に当たらないとした事例 2 知事の交際費に係る公文書に記載された債権者の振込先銀行名及び口座番号につき,奈良県情報公開条例10条3号に非開示事由として規定する法人等情報に当たるか否かの判断は当該情報の内容,性質,当該法人等の事業内容,その事業活動等における当該情報の重要性等諸般の事情を総合して個別具体的に判断するのが相当であるとした上,当該口座の入出金の明細,残高等の内容が開示されるのであれば格別,銀行の守秘義務を前提とすれば,振込先銀行や口座番号が開示されることによる債権者の具体的な不利益はほとんど想定することができないとして,前記債権者の振込先銀行名及び口座番号は,前記法人等情報に当たらないとした事例 3 知事の交際費に係る公文書のうち,使途の種別として慶祝,弔慰,お見舞い,会費,賛助が記載された前途資金現金出納簿,交際費執行伺書及び領収書などの添付書類中の個人である相手方が識別できる部分につき,開示することにより関係者との信頼関係が損なわれるか否かの判断は,当該情報及び当該事務事業の具体的内容等を総合して個別具体的に行われるべきであり,支障が生ずるおそれが具体的客観的に存在することが必要であるとした上,県は公開による概括的抽象的な支障を主張するが,その可能性自体極めて小さいものであると考えられ,また,他の都道府県において知事交際費の全容をインターネットで公開していることは明らかであり,その結果事務に支障が生じたとは認められないとして,前記相手方が識別できる部分は,奈良県情報公開条例10条8号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たらないとした事例 4 知事の交際費に係る支出命令書に記載された資金前途職員の口座振替先の銀行名及び口座番号につき,資金前途職員の口座は知事交際費の適正な支出を目的として公務で開設されているものであって,当該職員の私的な銀行口座とはその性質を異にするとして,前記銀行名及び口座番号は,奈良県情報公開条例10条2号に非開示事由として規定する個人情報に当たらないとした事例 5 知事の交際費に係る公文書のうち,債権者からの請求書及び領収書に記載された債権者の従業員の氏名及び印影につき,奈良県情報公開条例10条2号に非開示事由として規定する個人情報とは,プライバシー保護の観点から法的保護に値する個人情報に限られるとした上,前記従業員はたまたま債権者に勤務していたものに過ぎず,人がどこに勤務しているか,及びどのような印影を使用しているかということは,当該個人のプライバシーにかかわることであって,むやみに公開されたくないという期待を持つと解され,かつその期待は法的保護に値するものであるとして,前記従業員の氏名及び印影は,前記個人情報に当たるとされた事例

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