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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成10(行ウ)16

事件名

 損害賠償代位請求事件

裁判年月日

 平成12年4月24日

裁判所名

 浦和地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市の納税課職員が市民税の徴収権を時効消滅させて市民税の徴収を違法に怠ったことについて同職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を怠っていたとして,前記市の議員により,地方自治法242条の2第1項4号に基づき提起された市長個人に対する損害賠償請求の訴えが,監査請求期間を徒過し,徒過したことにつき正当な理由もないとして,却下された事例 2 市の納税課職員が市民税の徴収権を時効消滅させて市民税の徴収を違法に怠ったことについて同職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を怠っていたとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき市長個人に対してされた損害賠償請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 市の納税課職員が市民税の徴収権を時効消滅させて市民税の徴収を違法に怠ったことについて同職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を怠っていたとして,前記市の議員により,地方自治法242条の2第1項4号に基づき提起された市長個人に対する損害賠償請求の訴えにつき,同人に発生した実体法上の損害賠償請求権の不行使が地方自治法242条1項所定の「怠る事実」に該当するとしても,実質上問題となるのは前記徴収権を時効によって消滅させたことの適否であり,求める是正措置も同じであることからすれば,その監査請求期間については,前記怠る事実に係る損害賠償請求権の発生原因となった行為のあった日又は終わった日を基準として同条2項の規定を適用するのが相当であるところ,当該監査請求についての怠る事実の終わった日は,前記職員が民法153条に基づき発した催告書が当該滞納者に到達してから6か月を経過した日と解すべきであるから,同監査請求はその監査請求期間を徒過しており,また,定例市議会の本会議における決算認定議案の審議の質疑応答の際,前記徴収権を時効消滅させたことが公表され,市の一般住民が相当な注意をもってすれば,同質疑応答がされた時点において当該行為を知り得たというべきであるところ,監査請求をしたのは同時点から約4か月以上を経過した後であるから,相当な期間内に監査請求をしたとはいえず,監査請求期間を徒過したことについて地方自治法242条2項ただし書所定の「正当な理由」がないとして,前記訴えを却下した事例 2 市の納税課職員が市民税の徴収権を時効消滅させて市民税の徴収を違法に怠ったことについて同職員の財務会計上の違法行為を阻止すべき指揮監督上の義務を怠っていたとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき市長個人に対してされた損害賠償請求につき,前記職員は,当該市民税の滞納者には地方税法331条1項1号に該当する事由が存在するから,同人の資産を調査して,同人の不動産を差し押さえ,前記市民税の徴収権を保全しなければならなかったというべきであるとした上,前記市長は市民税の徴収事務については個々の職員に任せており,滞納者の個別的な状況等について,職員から全く報告を受けていなかったというのであり,前記市長が徴収事務担当の職員から市民税の滞納状況等について特別に事情説明を求めたり,滞納者に関する情報について報告を受けたり,同情報が自らに伝達されるような態勢を確立するなどして,市民税の徴収を怠らないように適正な指導監督を行っていたと認めることはできないから,前記市長が前記職員による前記市民税の徴収の懈怠を阻止し得なかったことには重大な過失が認められるとして,前記損害賠償請求を認容した事例

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