裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成11(行コ)84
- 事件名
公文書非開示処分取消等請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所平成7年(行ウ)第19号)
- 裁判年月日
平成12年3月30日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 大学入試センター所長が発した「大学入学者選抜大学入試センター試験実施要項」中の受験者の個人別成績は,各大学に対してのみ提供することとし,その他に対しては提供しないものとする旨の通知が違法であるとしてした国家賠償請求が,棄却された事例 2 市立大学が国の機関である大学入試センターから取得した大学入試センター試験個人別成績一覧のうち開示請求者本人に係る部分に記録された情報が,横浜市公文書の公開等に関する条例(昭和62年横浜市条例第52号)9条1項4号に非開示事由として規定する国等協力関係情報に当たるとされた事例 3 市立大学が国の機関である大学入試センターから取得した大学入試センター試験個人別成績一覧のうち開示請求者本人に係る部分に記録された情報が,横浜市公文書の公開等に関する条例(昭和62年横浜市条例第52号)9条1項6号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たるとされた事例 4 市立大学の入学試験成績一覧表のうち開示請求者本人に係る部分及び解答用紙に記録された情報が,横浜市公文書の公開等に関する条例(昭和62年横浜市条例第52号)11条2項2号に個人情報の本人開示の除外事由として規定する「本人の評価,判定,診断,指導,選考等に関する情報であって,本人に開示しないことが正当と認められるもの」に当たるとされた事例
- 裁判要旨
1 大学入試センター所長が発した「大学入学者選抜大学入試センター試験実施要項」中の受験者の個人別成績は,各大学に対してのみ提供することとし,その他に対しては提供しないものとする旨の通知が違法であるとしてした国家賠償請求につき,前記通知において,センター試験の個人別成績を公表しないこととしたのは,これを開示することにより,受験業者等が,各大学の合格者の過去のデータを収集し,大学の入学難易度や合格圏を設定し,それに基づくランク付けを行い,大学が序列化するなどの問題が生ずるため,これを防ぐという趣旨に基づくものであり,それなりの合理性が認められるから,同通知に裁量違反の違法があるということはできず,また,そもそも,同通知は,市立大学(市)に対して法的な拘束力をもつものではなく,受験生の権利義務を制約するものでないことは明らかであるとして,前記請求を棄却した事例 2 市立大学が国の機関である大学入試センターから取得した大学入試センター試験個人別成績一覧のうち開示請求者本人に係る部分に記録された情報につき,大学入試センター所長は,センター試験の受験生の個人別成績の提供を受けた大学はこれを他に公表しないよう求めているのであるから,同情報を開示することによって,大学入試センターとの信頼関係ないしは協力関係は損なわれ,以後センター試験の実施等に伴う事務について,大学入試センターからの協力が得られなくなるような事態が生ずることは明らかであり,その後国立大学協会が公表した「国立大学の入試情報に関する基本的な考え方」においてそれと異なる考え方が示されているとしても,開示請求に対する非開示決定当時においては,前記市立大学が前記情報を開示したとすれば,大学入試センターとの信頼関係が損なわれ,混乱が生ずるおそれがあったことは明らかであるとして,前記情報は,横浜市公文書の公開等に関する条例(昭和62年横浜市条例第52号)9条1項4号に非開示事由として規定する国等協力関係情報に当たるとした事例 3 市立大学が国の機関である大学入試センターから取得した大学入試センター試験個人別成績一覧のうち開示請求者本人に係る部分に記録された情報につき,同開示請求に対する非開示決定がされた当時,センター試験の成績は個人には開示しないことが当然の前提となっていたものであるから,同情報を開示することにより,センター試験を運用,利用している関係者間に予測不可能な混乱をもたらすことが客観的に予測され,国と市との信頼関係ないし協力関係を損ない,前記市立大学の次年度以降の大学入学者選抜の事務に著しい支障をもたらす蓋然性が高いと認められるとして,前記情報は,横浜市公文書の公開等に関する条例(昭和62年横浜市条例第52号)9条1項6号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たるとした事例 4 市立大学の入学試験成績一覧表のうち開示請求者本人に係る部分及び解答用紙に記録された情報につき,同情報を開示すると,学生に入学時の成績にこだわらずすべて平等にスタートラインに立たせた上で,主体的な関心に基づいた学習を進めるという教育理念・方針に変更を迫るような影響が生じるということができるところ,その教育理念・方針は大学にとって極めて重要であり,その維持実現は,正当な目的があると評価されるので,前記情報は,横浜市公文書の公開等に関する条例(昭和62年横浜市条例第52号)11条2項2号に個人情報の本人開示の除外事由として規定する「本人の評価,判定,診断,指導,選考等に関する情報であって,本人に開示しないことが正当と認められるもの」に当たるとした事例
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