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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成10(行コ)65

事件名

 法人税更正処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成8年(行ウ)第103号ないし107号)

裁判年月日

 平成12年1月18日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 民法上の組合である映画投資事業組合の組合員である青色申告法人が,同組合が映画の所有権を購入し,映画配給会社に賃貸したとして,同映画の持分権を減価償却資産としてその減価償却費を損金の額に算入して法人税の確定申告をしたのに対し,税務署長が当該減価償却費の損金算入を否認してした法人税の更正が,適法とされた事例

裁判要旨

 民法上の組合である映画投資事業組合の組合員である青色申告法人が,同組合が映画の所有権を購入し,映画配給会社に賃貸したとして,同映画の持分権を減価償却資産としてその減価償却費を損金の額に算入して法人税の確定申告をしたのに対し,税務署長が当該減価償却費の損金算入を否認してした法人税の更正につき,課税は,私法上の行為によって現実に発生している経済効果に則してされるものであるから,第一義的には私法の適用を受ける経済取引の存在を前提として行われるが,課税の前提となる私法上の当事者の意思を,当事者の合意の単なる表面的,形式的な意味によってではなく,経済実体を考慮した実質的な合意内容に従って認定し,その真に意図している私法上の事実関係を前提として法律構成をして課税要件への当てはめを行うべきであるとした上,課税庁が租税回避の否認を行うためには,原則的には,法文中に租税回避の否認に関する明文の規定が存する必要があるが,仮に法文中に明文の規定が存しない場合であっても,租税回避を目的としてされた行為に対しては,当事者が真に意図した私法上の法律構成による合意内容に基づいて課税が行われるべきであるところ,前記映画に係る配給契約は,単なる映画の賃貸,配給契約とみることはできず,前記法人は,映画興行による利益と減価償却費の損金計上等によって生ずる課税上の利益を得ることのみを目的として,単に資金の提供を行う意思の下に前記組合に参加したものであり,同組合を通して同映画を所有し,使用収益するなどの意思は有していなかったと認められることからすると,一連の取引の実質は同法人が前記組合を通じて映画興行に対する融資を行ったものであって,同取引により同映画に関する所有権その他の権利を真実取得したものではなく,前記取引に係る各種契約書上,単に同法人の租税負担を回避する目的のもとに,同組合が同映画の所有権を取得するという形式,文言が用いられたにすぎないから,同映画が減価償却資産に当たるとしてその減価償却費を損金の額に算入することは相当ではないとして,前記更正を適法とした事例

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