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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成8(行コ)35

事件名

 損害賠償請求住民訴訟控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成二年(行ウ)第三〇号)

裁判年月日

 平成11年12月27日

裁判所名

 名古屋高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市長が,市と,市長を代表者とする財団法人との双方を代表して締結した,同財団法人が使用した施設等を買い受ける旨の契約について,民法108条の類推適用が肯定された事例
2 市長が,市と,市長を代表者とする財団法人との双方を代表して,同財団法人が使用した施設等を買い受ける旨の契約を締結した場合において,市議会が前記行為を追認したことにより,前記契約の法律効果が市に帰属するとされた事例
3 市が,市長を代表者とする財団法人との間で締結した,同財団法人が使用した施設等を買い受ける旨の契約について,市長らに裁量権の逸脱,濫用があるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,市に代位して,市長らに対してされた損害賠償請求等が一部認容された事例

裁判要旨

 1 市長が,市と,市長を代表者とする財団法人との双方を代表して締結した,同財団法人が使用した施設等を買い受ける旨の契約について,民法108条が類推適用されるかにつき,地方公共団体の長が地方公共団体を代表してする随意契約に当たり,同時に,契約の相手方をも代表してその利益を図る立場に立つこと(双方代理)は,相手方の利益を図る結果,地方公共団体の利益を損なう危険があるから,民法108条が類推適用され,その契約の効力は直ちには地方公共団体に帰属しないが,双方代理行為による契約であっても,契約当事者間に実質的な利益相反関係が存しない場合には,地方公共団体の利益が損なわれる危険はないから,契約の効力は地方公共団体に帰属するとした上,前記市長は,市と前記財団法人の双方を代表して前記契約を締結したものと認められるところ,前記契約に当たり,前記財団法人の利益を図ることが,最終的に市の財産的利益を図ることにつながるとは当然にはいえず,両者の利益は相反する関係に立つから,前記契約の効力は直ちには市に帰属しないとした事例
2 市長が,市と,市長を代表者とする財団法人との双方を代表して,同財団法人が使用した施設等を買い受ける旨の契約を締結した場合において,市議会が前記行為を追認したことにより,前記契約の法律効果が市に帰属するかにつき,地方公共団体の長による利益相反行為に民法108条が類推適用され,その効果が本人である地方公共団体に帰属しないとしても,当該地方公共団体の最高意思決定機関である議会がその行為を追認した場合には,民法116条の類推適用により,その意思に沿って本人に法律効果が帰属するものと解すべきであるとした上,市議会は,承認決議により,前記契約の効果を市に帰属させる意思を黙示的に表明したものと認められるから,前記契約の法律効果は市に帰属するとした事例
3 市が,市長を代表者とする財団法人との間で締結した,同財団法人が使用した施設等を買い受ける旨の契約について,市長らに裁量権の逸脱,濫用があるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,市に代位して,市長らに対してされた損害賠償請求等につき,地方公共団体の長が,当該地方公共団体の施策のため必要な物的基礎を確保する目的で,購入の際の諸事情から見て不適正とはいえない価格で物品を購入することは何ら違法ではないが,前記目的とは異なる目的で物品を購入したり,当該地方公共団体にとって必要でない物品を購入したり,適正価格を大きく超える価格で購入したりすること等は,裁量権の逸脱,濫用であって,違法であると解されるところ,地方財政法4条1項の「その目的」とは,経費を負担する行為に通常伴う目的を意味すると解すべきであるから,物品を購入する内容の売買契約の目的として,契約の相手方に対する補助金を交付する趣旨を含ませることは,同条項に違反し,違法であるとした上,前記契約において市が高額の代金額を約束したのは,前記財団法人の赤字を回避するという目的によるものであり,実質的には,補助金を正規の手続を経ずに支払うのと同一の行為と評価できるから,物品購入に関する裁量権の逸脱,濫用に当たり違法であるとして,前記請求を一部認容した事例

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