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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成10(行コ)92

事件名

 固定資産税賦課徴収懈怠違法確認等請求控訴事件(原審・宇都宮地方裁判所平成9年(行ウ)第6号)

裁判年月日

 平成11年9月21日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 町の文化会館の用地として賃借した土地につき,同土地の所有者に対しいったん賦課した平成5年度の固定資産税を免除したことが,同税の徴収を違法に怠っているとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき町長に対してされた前記怠る事実の違法確認を求める訴え及び同4号に基づき町長個人に対してされた損害賠償を求める訴えが,適法な住民監査請求を経ていないとして,いずれも却下された事例 2 町の文化会館の用地として賃借した土地につき,同土地の所有者に対し平成6年度から平成8年度までの固定資産税を賦課しない措置を採ったことが同税の賦課及び徴収を違法に怠っているとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき町長個人に対してされた損害賠償請求が,同請求権が存在しないとして棄却されたのに対し,同項3号に基づき町長に対してされた怠る事実の違法確認請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 町の文化会館の用地として賃借した土地につき,同土地の所有者に対しいったん賦課した平成5年度の固定資産税を免除したことが,同税の徴収を違法に怠っているとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき町長に対してされた前記怠る事実の違法確認を求める訴え,及び,同項4号に基づき町長個人に対してされた損害賠償を求める訴えにつき,前記免除は,いったん発生し,確定した具体的租税債権という地方公共団体の財産を放棄する処分というべきであるから,同法242条1項にいう財務会計行為に該当するところ,具体的な租税債権が発生している状況において,その免除が違法無効である場合には,租税債権が存続することになり,怠る事実の存否はその前提となる免除の違法の有無に帰着することになるから,前記免除を基準として住民監査請求の期間制限の規定を適用するのが相当であるとして,平成5年7月中旬に平成5年度固定資産税更正通知書の送付によってされた前記免除に関し,平成9年3月14日にされた前記住民監査請求が,監査請求期間を徒過していることは明白であり,また,同法242条2項の規定は,法的安定性を確保する上で速やかにこれを確定させることとしたものと解され,同条項は,監査請求期間の始期を「当該行為のあった日又は終わった日」として個々の住民の知,不知にかからせていないのであるから,通常の方法に従って事務処理が行われており,当該財務会計行為の存在及び内容が秘密裡にされ,または,ことさら秘匿されていたといえない場合には,特段の事情のない限り,同項ただし書の「正当な理由」は存在しないと解するのが相当であるところ,前記免除が秘密裡にされたりその存在及び内容が秘匿されたりしていたような事情は認められず,前記免除に関する事務処理は通常の方法に従って行われたものと認められ,住民において相当の注意力をもって調査すれば,平成6年3月に平成6年度予算が町議会で可決されたころには,前記免除の存在及び内容を知ることができたものと認められるから,前記特段の事情は認められず,同法242条2項ただし書にいう監査請求期間の徒過についての正当な理由は存在しないので,前記各訴えは適法な住民監査請求を経ていないとして,いずれも却下された事例 2 町の文化会館の用地として賃借した土地につき,同土地の所有者に対し平成6年度から平成8年度までの固定資産税を賦課しない措置を採ったことが同税の賦課及び徴収を違法に怠っているとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき町長個人に対してされた損害賠償請求及び同項3号に基づき町長に対してされた怠る事実の違法確認請求につき,課税免除を規定する同町税条例72条2項は,免除を受けようとする者からの申請を要求しているところ,同人からの申請がなく,これに対する行政処分もされていないから,同項に定める課税免除はされておらず,前記各年度に係る固定資産税が成立しているにもかかわらず,賦課徴収がされない状態で推移しているというべきであり,これを怠る事実として争うことができるとともに,同税に係る違法確認請求の訴えは,問題となるべきその基礎となる財務会計行為は存在しないというべきであるから,地方自治法242条2項の期間制限を受けず,町長が同税の賦課徴収をしていないことは違法な不作為というべきであるとした上で,同町は前記土地の所有者との間において,同土地の賃貸借契約上の賃料につき,固定資産税相当額を加算した額とする旨の事実上の合意が成立していたところ,前記課税免除措置が採られることを前提として,前記固定資産税相当額を除いた賃料額を契約上の賃料として合意したことから,同措置を採ることによって,その措置を採らなかったならば賃料として支払う必要のあった前記固定資産税相当額の支払いを免れたという利益を得たことになり,両者の間には相当因果関係があるから,両者は損益相殺の対象となるべきであるとして,同町には,前記課税免除措置を採ったことによる損害はなかったとして,前記町長個人に対する損害賠償請求を棄却し,これに対し,住民訴訟は,地方公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟であって,特に,同法242条の2第1項3号の怠る事実の違法確認請求は,その訴訟形態からして,法規適合性の確保という点に重点があると解されるところ,前記課税免除措置は条例の明文の規定に反し,法規に適合していない程度が軽微であるとはいえず,また,町が土地を賃借する場合の合意賃料の内容も事例ごとに異なり得るから,常に損害がないという結果になるともいえず,前記怠る事実の違法確認請求訴訟の趣旨目的と前記課税免除措置の態様等を併せ考慮すると,前記町長の不作為は地方自治法242条の2第1項3号の関係においても違法であるとして,前記怠る事実の違法確認請求を認容した事例

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