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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成10(行ウ)57

事件名

 運賃値上認可取消請求事件

裁判年月日

 平成11年9月13日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 鉄道事業の旅客運賃の値上げ等を内容とする鉄道事業法16条に基づく鉄道旅客運賃変更認可処分の取消を求める訴えにつき,前記鉄道事業に係る鉄道の沿線に居住し,同鉄道を利用している者らの原告適格が否定された事例

裁判要旨

 鉄道事業の旅客運賃の値上げ等を内容とする鉄道事業法16条に基づく鉄道旅客運賃変更認可処分の取消しを求める訴えにつき,同条1項は,鉄道運送事業者は旅客又は貨物の運賃及び省令で定める料金を定め大臣の認可を受けなければならないとしているが,前記鉄道事業に係る鉄道を利用使用とする者は,前記認可処分によって設定された旅客運賃を前提とした料金で乗車券等を購入して初めて運送契約が締結されることになるのであり,同認可処分そのものは,鉄道利用者の契約上の地位に直接影響を及ぼすものではないから,同認可処分により,前記鉄道の沿線に居住し,同鉄道を利用している者らが自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあるとはいえないとし,また,同条2項3号が「旅客又は貨物の運賃及び料金を負担する能力にかんがみ,旅客又は荷主が当該事業を利用することを困難にするおそれがないものであること」を認可の基準としているのも,ここで想定されている鉄道利用者も一般化された抽象的な概念としての利用者を指すものと考えるべきであり,同法の規定する鉄道の運賃等の認可に当たっては,その利用者となる国民ないし地域住民一般の所得,家計の状況,鉄道利用の実態等を考慮すべきものとしているにとどまり,鉄道利用者各個人の個別の事情等を考慮すべきものとはしておらず,同法は,鉄道の利用者の利益は,前記認可制度が目指す公益の保護を通じてその結果として保護されるべきこととしているものと解され,さらに,前記認可の手続面においても,同法は当該鉄道の利用者の個々人に対して,認可手続への関与を認めているわけではなく,このような前記認可制度の趣旨及び法規の定めに照らせば,同法の規定が,当該認可の対象となる鉄道運賃等にかかる路線の個々の利用者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むものでないことは明らかであるとした上,前記の者らには,前記認可処分により自己の法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれがあるとはいえないとして,同人らの原告適格を否定した事例

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