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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成9(行ウ)141

事件名

 文書開示拒否処分取消請求事件

裁判年月日

 平成11年3月30日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号。平成11年東京都条例第5号により全部改正,同改正前)に基づく都出納長室の保管に係る警視庁総務部企画課の管外出張に関する旅行命令簿及び旅費請求内訳書兼領収書の開示請求に対し,都知事が出納長室ではこれを保管していないとしてした非開示決定の取消しを求める訴えが,却下された事例 2 警視庁職員の管外出張旅費に係る支出命令書に記録された情報が,東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号。平成11年東京都条例第5号により全部改正,同改正前)9条8号に非開示事由として規定する事務事業情報に該当しないとされた事例 3 警視庁職員の通信機器の配置,運用,修理等を目的とした管外出張旅費に係る支出命令書中の出張の内容,時期及び場所を推認させる情報並びに当該支出に関与した者の特定を可能にする情報が,東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号。平成11年東京都条例第5号により全部改正,同改正前)9条4号に非開示事由として規定する公共秩序維持情報に該当するとした事例 4 警視庁職員の会議への参加のための管外出張旅費に係る支出命令書中の出張の内容,時期,場所及び関係職員の特定を可能にする情報が,東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号。平成11年東京都条例第5号により全部改正,同改正前)9条4号に非開示事由として規定する公共秩序維持情報に該当するとされた事例

裁判要旨

 1 東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号。平成11年東京都条例第5号により全部改正,同改正前)に基づく都出納長室の保管に係る警視庁総務部企画課の管外出張に関する旅行命令簿及び旅費請求内訳書兼領収書の開示請求に対し,都知事が出納長室ではこれを保管していないとしてした非開示決定の取消しを求める訴えにつき,前記文書は,既に警視庁総務部会計課長に返付されているところ,前記開示請求においては開示を求める公文書の範囲につき「出納長室保管の」という限定を付しているから,同開示請求の対象となる文書には該当せず,前記訴えは不適法であるとして,これを却下した事例 2 警視庁職員の管外出張旅費に係る支出命令書に記録された情報につき,同情報は東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号。平成11年東京都条例第5号により全部改正,同改正前)9条8号に規定する監査,検査,取締り等の事務事業に関する情報ということはできない上,前記支出命令書に係る出納事務を実施機関が行う事務事業と解しても,前記情報を開示することによって出納事務の目的が損なわれるとはいえず,また,同情報が単なる出納に関する情報に止まる場合,これは公金支出の正当性に関する資料というべきであるから,同情報を開示することにより所管部局等関係当事者間の信頼関係が損なわれるとはいえないなどとして,同情報は同号に非開示事由として規定する事務事業情報に該当しないとした事例 3 警視庁職員の通信機器の配置,運用,修理等を目的とした管外出張旅費に係る支出命令書中の出張の内容,時期及び場所を推認させる情報並びに当該支出に関与した者の特定を可能にする情報につき,通常通信機器の配置等に関する支出は旅費支出を伴わないものであるにもかかわらず,当該出張には特に管外出張旅費が支出されたことからすると,同出張は比較的まれな通信機器の配置,運用,修理等に関するものものということになるから,その内容,時期及び場所を推認させる情報を開示した場合は,犯罪の捜査その他公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがあるといえ,また,警察の業務が警察規制を物理的かつ強制的に実現するものである結果,その相手方となる者の反発,反感を招きやすいなどという警察活動の特殊性を考慮すると,当該支出に関与した者の特定を可能にする情報についても前記支障を認めることができるとして,前記各情報は東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号。平成11年東京都条例第5号により全部改正,同改正前)9条4号に非開示事由として規定する公共秩序維持情報に該当するとした事例 4 警視庁職員の会議への参加のための管外出張旅費に係る支出命令書中の出張の内容,時期,場所及び関係職員の特定を可能にする情報につき,前記会議の目的が全国レベルの問題を扱うものであることからすると,警視庁管内の特定の犯罪の捜査に関するものではないことが推認され,また,前記会議の概要は明らかにされていないから,その開催に関する事実が開示されることにより公共の安全と秩序の維持について生ずる支障の程度も明らかではないが,広域にわたる重要犯罪に関しないものは開示することとした場合,複数の会議に関する参加旅費の支出のうち開示されないものは広域にわたる重要犯罪に関するものであることを明らかにする結果となり,そのこと自体が一定の捜査情報を提供することとなる上,東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号。平成11年東京都条例第5号により全部改正,同改正前)9条4号は前記支障の顕著性を要件としていないとして,前記情報は同号に非開示事由として規定する公共秩序維持情報に該当するとした事例

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