裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成8(行ウ)190
- 事件名
損害賠償代位請求事件
- 裁判年月日
平成11年1月28日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
市が日本下水道事業団に委託してその費用を支出した下水道施設建設工事に関し,同事業団が指名競争入札を経て発注した電気設備工事に係る請負代金が,同事業団及び業者間の談合により不当に高額となったため,市は,談合がなければ形成されたであろう代金額と実際の代金額との差額相当分の損害を被ったにもかかわらず,前記事業団及び業者に対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとしてされた住民監査請求が,請求期間を徒過し,これに正当な理由はないとされた事例
- 裁判要旨
市が日本下水道事業団に委託してその費用を支出した下水道施設建設工事に関し,同事業団が指名競争入札を経て発注した電気設備工事に係る請負代金が,同事業団及び業者間の談合により不当に高額となったため,市は,談合がなければ形成されたであろう代金額と実際の代金額との差額相当分の損害を被ったにもかかわらず,前記事業団及び業者に対する損害賠償請求権の行使を違法に怠っているとしてされた住民監査請求につき,地方自治法242条1項所定の財務会計上の行為の違法又は不当とは,財務会計上の規範に照らし客観的に不適切又はこれに違反する点があることをいい,当該行為を行う職員の故意又は過失を要するものではないのであって,当該行為の内容,手続に当該行為を行う職員として審査すべき要件を客観的に満たさない違法があり,これに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって同項にいう「財産の管理を怠る事実」とする住民監査請求については,当該請求権の相手方が当該行為の直接の相手方でない場合を含め,当該請求権の行使が可能である以上,当該行為のあった日又は終わった日を基準として同条2項の規定が適用されると解されるところ,前記住民監査請求は,前記費用の支出負担行為である市と前記事業団との間の前記委託に係る協定の締結が,委託の目的達成のための必要最少限度の経費を超える額でされたとの客観的な違法に基づいて発生する損害賠償請求権の不行使をもって前記「財産の管理を怠る事実」とするものであるから,監査請求期間は前記協定の締結時を基準として判断すべきであり,これによると,前記住民監査請求は請求期間を徒過してされたものであって,前記談合に関する新聞報道の経緯に照らせば,住民が相当の注意力をもって調査したときには,公正取引委員会が前記業者に対し独占禁止法3条違反を理由として課徴金納付命令を発したことが報道された時点までには,前記支出負担行為の存在及び同行為が前記談合に係る金額を基礎とするものではないかとの疑いを持つに足りる事実を知ることができたものというべきであるから,同時点から約11か月を経過してされた前記住民監査請求は,請求期間を徒過したことに正当な理由はないとした事例
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