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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成9(行ウ)219

事件名

 公文書非開示決定取消請求事件

裁判年月日

 平成10年11月12日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 都水道局職員の非違行為に対する懲戒処分関係文書に記録された対象職員の所属,職種,氏名,生年月日,住所,都に採用後の職歴及び処分歴,非違行為の内容,当該職員の弁明,処分の内容等の情報が,東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号)9条2号に非開示事由として規定する個人情報に当たるとされた事例 2 都水道局職員の非違行為に対する懲戒処分関係文書に記録された当該職員及び関係者からの事情聴取によって得た事実関係等の調査結果又はその要旨が,東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号)9条8号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たるとされた事例 3 都水道局職員の懲戒処分関係文書の開示請求に対して都知事が開示できる部分を分離せずに全部非開示とした決定に違法はないとした事例

裁判要旨

 1 都水道局職員の非違行為に対する懲戒処分関係文書に記録された対象職員の所属,職種,氏名,生年月日,住所,都に採用後の職歴及び処分歴,非違行為の内容,当該職員の弁明,処分の内容等の情報につき,公務員の心身の状況,病歴,学歴,親族関係等,当該公務員の公務と直接関係のない情報が東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号)9条2号本文にいう「個人に関する情報」に当たることはいうまでもなく,前記処分の内容のような公務に関連した情報であっても,勤務態度,勤務成績,処分歴のような個人の資質,名誉にかかわる当該公務員固有の情報であって,本人としては一般的にこれを他人に知られたくないと望み,また,そのように望むことが正当と認められるものは,みだりに公開されるべきではないから,このような情報も前記「個人に関する情報」に含まれ,また,前記処分の内容等の情報は,同号本文にいう「特定の個人が識別され得るもの」に当たるとして,前記各情報は同号に非開示事由として規定する個人情報に当たるとした事例 2 都水道局職員の非違行為に対する懲戒処分関係文書に記録された当該職員及び関係者からの事情聴取によって得た事実関係等の調査結果又はその要旨につき,これらの情報は,東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号)9条8号にいう「職員の身分取扱い」に関する情報であって,内容等を秘密にすることを前提として行った事情聴取を中心とする調査で得られた情報により構成されていると認められるから,これらを開示すると,任意に事情聴取に応じた関係当事者との信頼関係を損なうことになることは否定できない上,調査担当部局としては,事情聴取の内容等が公開されることを前提として事情聴取を行わなければならないこととなり,そうなると,関係者が自己の供述内容等が開示されることを嫌って事実をありのままに述べることに消極的になるなどして,懲戒処分等の内容を決定するに当たり必要となる具体的,客観的な情報が十分に得られなくなるおそれや,供述内容が公開されることを憂慮して当該職員が十分な弁明をすることができず,公正な処分を行う上で支障が生ずることも予想されるなど,将来の同種の処分関係事務の公正又は円滑な執行に支障が生ずるおそれがあるとして,前記情報は同号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たるとした事例 3 都水道局職員の懲戒処分関係文書の開示請求に対して都知事がした全部非開示決定につき,同文書のうち,対象職員の氏名等,東京都公文書の開示等に関する条例(昭和59年東京都条例第109号)9条2号に非開示事由として規定する個人情報に当たる情報,及び非違行為の内容等,同条8号に非開示事由として規定する事務事業情報に当たる情報とが記録された部分と,これ以外の部分とを容易に分離することが可能であるとしても,開示できる部分は極めて限定されたものとなり,その部分のみを開示することによっては,前記開示請求の趣旨に沿うことはできないから,一部開示の要件には当たらないとして,前記決定に違法はないとした事例

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