裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成9(行オ)1
- 事件名
登記実行処分取消請求再審事件
- 裁判年月日
平成10年7月16日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 行政事件訴訟法34条1項にいう「判決に影響を及ぼすべき攻撃又は防御の方法」の意義及びこれに当たるか否かの判断の手法 2 裁判所が取消訴訟の結果により権利を害される第三者に対し訴訟係属を通知すべき義務の有無 3 合資会社が,同会社の有限責任社員の退社を登記事項とする合資会社変更登記処分を取り消した判決により権利を害されたとしてした行政事件訴訟法34条1項に基づく再審の訴えにつき,同項所定の再審事由は認められないとした事例
- 裁判要旨
1 行政事件訴訟法34条1項にいう「判決に影響を及ぼすべき攻撃又は防御の方法」とは,攻撃又は防御の方法が従前の訴訟で提出されていたならば,当該訴訟の判決が第三者に有利に変更されていたであろうと認められる攻撃又は防御の方法をいい,従前の訴訟で既に判断されているものや,従前の訴訟で提出したとしても判決の結果が変わらないものは,これに当たらないと解するのが相当であり,これに当たるか否かは,原則として,再審原告である当該第三者の提出する攻撃又は防御の方法としての事実が真実だとした場合に,当該攻撃又は防御の方法が判決に影響を及ぼすことになるか否か,その主張が論理的正当性を有するか否かによって判断すべきである。 2 行政事件訴訟法22条1項は,取消訴訟の結果により権利を害される第三者を訴訟に参加させるか否かについて裁判所の裁量を認めているのであって,このような第三者に対し訴訟係属を通知すべき義務を明文で定めた規定は存在せず,また,自己の責めに帰すべき事由がなく訴訟に関与する機会を持たなかった者については,同法34条1項に基づく再審の訴えにより救済のみちが開かれているから,裁判所において,取消訴訟の結果により権利を害される第三者に対し,訴訟係属を通知する義務がないことは明らかであり,このように解しても憲法32条に反するものではない。 3 合資会社が,同会社の有限責任社員の退社を登記事項とする合資会社変更登記処分を取り消した判決により権利を害されたとしてした行政事件訴訟法34条1項に基づく再審の訴えにつき,前記判決は,前記登記処分に係る登記申請が,社員は他の社員の過半数の決議により退社する旨定めた前記合資会社の定款の規定及びこれに基づく退社決議によりされたことに関し,同定款の規定及びこれに基づく前記決議は商法147条,86条1項に違反し無効であるなどとして,前記処分を取り消したものであるところ,前記登記申請の際の申請書及びその添付書類中に前記有限責任社員が退社を申し出,又は退社に同意していたことを示す記載はなく,仮に,その事実があったとしても,形式的審査権限しか有しない登記官が前記登記処分をするに当たり,これを考慮することは法律上許されないから,前記有限責任社員は自ら退社を申し出,又は退社に同意していたものであって,前記判決には重大な事実誤認がある旨の前記合資会社の主張は,その前提において失当であり,行政事件訴訟法34条1項にいう「判決に影響を及ぼすべき攻撃又は防御の方法」には当たらず,また,前記合資会社の他の主張は前記判決により判断されているなどとして,前記訴えに同項所定の再審事由は認められないとした事例
- 全文