裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成9(行ケ)4
- 事件名
当選無効及び立候補禁止請求事件
- 裁判年月日
平成10年5月25日
- 裁判所名
大阪高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 公職選挙法251条の2第1項5号,2項と憲法31条 2 公職選挙法251条の2第1項5号にいう「秘書」の意義 3 衆議院(小選挙区選出)議員選挙で落選したもののこれと同時に施行された衆議院(比例代表選出)議員選挙で当選した候補者の地元後援会事務所の職員が公職選挙法221条1項1号所定の罪を犯して執行猶予付きの懲役刑に処せられた場合において,同職員が同法251条の2第1項5号所定の「秘書」に当たるとして検察官が同法211条1項に基づいてした前記候補者の当選無効及び立候補禁止請求が,認容された事例
- 裁判要旨
1 公職選挙法251条の2第1項5号は,民主主義の根幹である公職選挙の公明かつ適正を確保するという極めて重要な法益を実現するという目的で設けられたものであって,その立法趣旨は合理的であり,かつ,同号は,候補者等の秘書が候補者等又は選挙運動の総括主宰者若しくは地域運動主宰者と意思を通じて選挙運動をして禁固以上の刑に処せられたときに限っていわゆる連座の効果を生じさせることとし,立候補禁止の期間及びその対象となる選挙の範囲も限定しているのであって,このような規制は,全体としてみれば,前記立法目的を達成するための手段として必要かつ合理的であるから,同号は,憲法31条に違反するとはいえず,また,公職選挙法251条の2第2項は,同条1項5号所定の秘書に当たるか否かの判断及びその立証の便を考慮の上,同号所定のいわゆる連座制の実効を期すための規定であって,同号と同様に合理的なものであり,憲法31条に違反するものではない。 2 公職選挙法251条の2第1項5号にいう「秘書」とは,公職の候補者等の政治活動を助けるために,その指揮命令の下に種々の労務を提供する者のうち,相応の権限(裁量)と責任をもって担当事務を処理する者を指し,お茶くみや自動車の運転等の単純,機械的な補助業務について労務を提供しているにすぎない者はこれに当たらないが,前記「秘書」の解釈に当たり,スタッフ的な助言をする立場にあることを要するとか,同項1号から3号までに規定される者と同じ程度又はこれに近い程度の重要な役割を分担している場合に限るとか,政治活動の重要部分を表裏両面から補佐していることを要するなど限定的に解さなければならないとすることはできない。 3 衆議院(小選挙区選出)議員選挙で落選したもののこれと同時に施行された衆議院(比例代表選出)議員選挙で当選した候補者の地元後援会事務所の職員が公職選挙法221条1項1号所定の罪を犯して執行猶予付きの懲役刑に処せられた場合において,同職員が同法251条の2第1項5号所定の「秘書」に当たるとして検察官が同法211条1項に基づいてした前記候補者の当選無効及び立候補禁止請求につき,前記職員は,前記候補者の秘書と名乗り,その肩書を付した名刺を使用していたものであり,同候補者はこれを承諾又は少なくとも容認していたといえるから,前記職員は同法251条の2第2項により前記「秘書」と推定されるところ,同人が従事していた業務内容は,後援会等の会合の計画,設定,後援会役員の補充のための地元有力者への依頼,関係者への根回し,各種行事,告別式等への前記候補者の代理としての出席,陳情の取次ぎ等であり,これらは,単純な機械的補助事務にすぎないものではなく,多かれ少なかれ権限(裁量)と責任を伴うものというべきであって,前記職員が前記「秘書」に当たらないと認めることはできないとして,前記請求を認容した事例
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