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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成6(行ウ)18

事件名

 公文書非公開決定取消請求事件

裁判年月日

 平成7年11月27日

裁判所名

 神戸地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 いわゆる個人情報を非公開事由とする公文書公開条例の下において,請求者本人に関する情報が記載された公文書の公開請求がされた場合に,非公開事由該当性の判断に当たって,当該情報が自己情報であることを考慮することの可否 2 公文書の公開等に関する条例(昭和61年兵庫県条例第3号)に基づく自己の分娩に関する診療報酬明細書の公開請求に対し,県知事がした非公開決定が,適法であるとされた事例

裁判要旨

 1 公文書公開請求権及び自己情報開示請求権は,いずれも憲法により直接付与されるものではなく,地方公共団体が条例として制定することにより,初めて具体的な権利となり,その内容,保障の限界等が定まるものであるところ,公文書公開制度が憲法21条等から導かれるいわゆる「知る権利」を実体法上の権利として実現しようとするものであるのに対し,自己情報開示制度は憲法13条の精神に照らして尊重されるべき自己に関する情報の流れをコントロールする権利を実体法上の権利として実現しようとするものであって,両者は基本理念を異にし,性質や法技術的対応において独自の考慮を要する別個の制度というべきものであるから,いわゆる個人情報を非公開事由とする公文書公開条例の下において,請求者本人に関する情報が記載された公文書の公開請求がされた場合に,当該情報が自己情報であることを理由に,非公開事由に当たらないと解することはできない。 2 公文書の公開等に関する条例(昭和61年兵庫県条例第3号)に基づく自己の分娩に関する診療報酬明細書の公開請求に対し,県知事がした非公開決定につき,公文書公開制度における非開示事由は,だれにでも公開すべき情報とだれに対しても公開しない情報を区別するものであるから,個人の思想,宗教,健康状態,病歴等に関する情報であって,特定の個人が識別され得るもののうち,通常他人に知られたくないと認められるものを非公開事由として規定する同条例8条1号該当性の判断に当たっても,請求者が当該情報の本人であるか第三者であるかは考慮すべきではなく,また,同号にいう「通常他人に知られたくないと認められるもの」とは,特定の個人の主観的判断のいかんを問わず,社会通念に照らして判断すると他人に知られたくないと思うことが通常であると認められる情報をいうものと解するのが相当であるとした上,前記診療報酬明細書には請求者の健康状態あるいは病歴等に関する情報であって,特定の個人が識別され得るものが記載されており,同号所定の非開示事由に該当するとして,前記決定を適法であるとした事例

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