裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成7(行ケ)2
- 事件名
当選無効及び立候補禁止請求事件
- 裁判年月日
平成7年10月9日
- 裁判所名
仙台高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 公職選挙法251条の3第2項3号にいう「相当の注意を怠らなかつたとき」の意義 2 県議会議員選挙で当選した候補者の選挙対策本部の事務局員及び同候補者の配偶者が,当該選挙に際し公職選挙法221条1項所定の罪を犯して執行猶予付きの懲役刑に処せられたため,検察官が同法211条1項に基づいてした前記候補者の当選無効及び立候補禁止請求につき,前記候補者が同事務局員による選挙犯罪を防止するために同法251条の3第2項3号にいう「相当の注意を怠らなかつた」とはいえないなどとして,前記請求を認容した事例
- 裁判要旨
1 公職選挙法251条の3第2項3号にいう「相当の注意を怠らなかつたとき」とは,当該公職の候補者等において,同条1項所定の「組織的選挙運動管理者等」が買収等の選挙犯罪をしようとしても容易にすることができないだけの選挙組織上の仕組みを作り,これを維持していた場合をいい,具体的には,選挙浄化をも念頭においた組織内の人的配置をして,組織的選挙運動管理者に役割,権限が過度に集中しないように留意し,選挙資金の管理,出納が適正明確に行われるように十分に心掛け,その上で,同項所定の罪に該当する行為の芽となるような事項についても,その防止を計るために候補者等を中心として常時相互に報告,連絡,相談し合えるだけの態勢にしていたと認められる場合などがこれに当たる。 2 県議会議員選挙で当選した候補者の選挙対策本部の事務局員及び同候補者の配偶者が,当該選挙に際し公職選挙法221条1項所定の罪を犯し執行猶予付きの懲役刑に処せられたため,検察官が同法211条1項に基づいてした前記候補者の当選無効及び立候補禁止請求につき,前記事務局員は,後援会組織を利用した選挙対策本部により選挙運動を行うことにつき前記候補者と意思を通じた上で,選挙計画の立案,調整,運動方針の決定,運動員の指揮監督等を行っていたものであるから,同法251条の3第1項所定の「組織的選挙運動管理者等」に当たるとした上,前記候補者は選挙運動の計画立案から運動の指揮監督に至るまでの選挙運動の中心的役割をほとんど前記事務局員一人に任せ切りにし,その行動を適切に管理する態勢をとっておらず,また,選挙資金についても,同法の規定する出納責任者は名目上の存在であって,前記配偶者に事実上資金の管理がゆだねられており,前記事務局員と前記配偶者の意思の連絡のみで容易に選挙犯罪を行い得る状態にあったのであるから,前記候補者が同条2項3号所定の「相当の注意を怠らなかつた」とはいえず,また,前記配偶者が前記候補者と意思を通じて選挙運動をしたことは明らかであるなどとして,前記請求を認容した事例
- 全文