裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成5(行ウ)2
- 事件名
暴力団指定処分の取消請求事件
- 裁判年月日
平成7年5月17日
- 裁判所名
那覇地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成5年法律第41号による改正前)3条による指定処分の取消請求が,当該指定を受けた団体は,同条1,2,3号所定の要件を満たしているから,当該団体を同条所定の暴力団に該当するとした県公安委員会の判断は適法であり,同法(平成5年法律第89号による改正前)5条による聴聞手続にも違法はないなどとして,棄却された事例 2 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成5年法律第41号による改正前)による指定暴力団員の行為に対する規制及び同法(同改正前)3条2号による犯罪歴を有する者の結社の自由の制限と憲法14条1項 3 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成5年法律第41号による改正前)3条による暴力団の指定制度と憲法21条1項
- 裁判要旨
1 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成5年法律第41号による改正前)3条による指定処分の取消請求につき,当該指定を受けた団体は,暴力団としての威力を有し,その構成員が威力を利用してする資金獲得行為を容認しているから同条1号の目的要件を満たしている上に,同条2号の比率要件も満たし,さらに,その代表者等の統制下に階層的に構成された団体であって同条3号の要件も満たしているから,当該団体を同条所定の暴力団に該当するとした県公安委員会の判断は適法であり,また,同法(平成5年法律第89号による改正前)5条による聴聞手続は,指定をしようとする団体を代表する者等に意見の陳述及び証拠の提出をさせる機会を与える手続であって,公安委員会が認定する際に使用する具体的資料を開示することまで認めたものではないから,同手続における意見陳述に際し,当該団体からされた前記各要件該当性に関する認定資料の開示を前記県公安委員会が拒否した点にも何ら違法はないなどとして,前記請求が棄却された事例 2 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成5年法律第41号による改正前)による指定暴力団員の行為に対する規制は,いずれも暴力団員に特有の,それ自体反社会的かつ不当な行為であって,市民生活の安全と平穏を確保するために規制の必要性が高いものを対象としているから,合理的な理由に基づく規制であり,また,同法(同改正前)3条2号は,一般的に暴力団には暴力的不法行為等による犯罪を犯した者が著しく多く含まれているという特性に着目し,これを要件として,同要件に該当する暴力団だけを指定することとしたものであるから,同号による犯罪歴を有する者の結社の自由の制限は,合理的な理由のない差別とはいえず,いずれも憲法14条1項に違反しない。 3 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成5年法律第41号による改正前)による指定暴力団員の行為に対する規制,同法(同改正前)3条2号による犯罪歴を有する者の結社の自由の制限は,暴力団員による暴力的要求行為等により侵害される市民生活の安全と平穏を保護することを目的として,規制の対象となる暴力団員を同条による指定処分によって特定した上,その行為を中止命令等の行政命令やこれに違反する者に対する罰則の適用によって規制するにとどまるものであって,暴力団の結成や暴力団への自発的な加入を規制したり,団体の解散を命じたり,活動の制限を課すなど,結社自体を直接規制するものではないから,その目的,制度趣旨,規制方法等に照らして必要かつ合理的な制限であり,憲法21条1項に反しない。
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