裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成1(行コ)7
- 事件名
再入国不許可処分取消等請求控訴事件
- 裁判年月日
平成6年5月13日
- 裁判所名
福岡高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格の法的性質 2 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格(以下「協定永住資格」という。)を有する在日韓国人がした米国留学を理由とする再入国許可申請に対する不許可処分の取消しを求める訴えにつき,その後同人は出国したことにより協定永住資格を喪失したが,なお訴えの利益が認められるとした事例 3 外国人登録法(昭和62年法律第102号による改正前)に規定する指紋押なつ制度と憲法13条,14条並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年条約第7号)2条1項,7条,17条1項,26条 4 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格を有する在日韓国人がした再入国許可申請に対し,法務大臣がした同人が外国人登録法(昭和62年法律第102号による改正前)に規定する指紋押なつを拒否していることを主な理由とする再入国不許可処分が,裁量権の範囲を超え又はこれを濫用した違法があるとされた事例 5 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格を有していた在日韓国人が提起した同資格の存在確認請求が,棄却された事例 6 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格を有していた在日韓国人が法務大臣のした再入国不許可処分の違法を理由としてした国家賠償請求が,処分時に同処分が違法であることを法務大臣において知り又は知り得べきであったとはいえないとして,棄却された事例
- 裁判要旨
1 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格(以下「協定永住資格」という。)は,本邦に在留することができる資格という点では,在留資格の一態様であり,その存続要件は,出入国管理及び難民認定法に定める一般の永住資格者と異なるところはないから,協定永住資格を有する者が,前記資格を保持したまま再入国する意図をもって出国しようとする場合には,再入国許可を必要とし,逆に,再入国許可を受けずに出国した場合には,同資格を失うこととなる。 2 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格(以下「協定永住資格」という。)を有する在日韓国人がした米国留学を理由とする再入国許可申請に対する不許可処分の取消しを求める訴えにつき,その後同人は出国したことにより協定永住資格を喪失したが,法務大臣が適法に再入国許可をしていれば出国によっても協定永住資格を喪失しなかったのであるから,不許可処分が取り消されたとしても,再入国許可をする余地がないと法務大臣において主張することは信義則に反するなどとして,訴えの利益が認められるとした事例 3 外国人登録法(昭和62年法律第102号による改正前)に規定する指紋押なつ制度は,憲法13条,14条並びに市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年条約第7号)2条1項,7条,17条1項,26条に違反しない。 4 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格(以下「協定永住資格」という。)を有する在日韓国人がした再入国許可申請に対し,法務大臣がした同人が外国人登録法(昭和62年法律第102号による改正前)に規定する指紋押なつを拒否していることを主な理由とする再入国不許可処分が,協定永住資格を有する者に対する再入国許否処分についての法務大臣の裁量の範囲は,他の在留資格者に対する場合に比べて一定の制約があるものと解されるところ,指紋押なつ制度の実施状況の変遷に照らし,前記処分当時2回目以降の指紋押なつ自体は重要性を失っていた反面,前記不許可処分により当該外国人が受ける不利益は,本邦に生まれ育ち,永住の意思がありながら,結果的に前記資格を喪失させる退去強制処分と実質的に異ならない程のものであるから,比例原則に反しており,法務大臣の裁量権の範囲を超え又はこれを濫用した違法があるとされた事例 5 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格を有していた在日韓国人が提起した同資格の存在確認請求が,同人は再入国許可を受けずに出国したことにより同資格を喪失したとして,棄却された事例 6 日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第28号)並びに日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法(昭和40年法律第146号,平成3年法律第71号により廃止)に基づく日本国における永住資格を有していた在日韓国人が法務大臣のした指紋押なつ拒否を理由とする再入国不許可処分が違法であるとしてした国家賠償請求につき,その処分当時においては,裁判例も指紋押なつ拒否を理由とする再入国不許可処分に違法があるということはできないとしていたから,法務大臣において同処分が違法であることを知り又は知り得べきであったとはいえないとして,前記国家賠償請求が棄却された事例
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