裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 昭和42(行ウ)61

事件名

 新東京国際空港工事実施計画認可処分等取消請求事件

裁判年月日

 平成6年1月27日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可に伴う同法55条の3第2項,40条による進入表面,転移表面及び水平表面の告示の行政処分性 2 航空法56条の2第1項に基づき運輸大臣がした第一種空港の延長進入表面,円錐表面及び外側水平表面の指定の行政処分性 3 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可の取消しを求める訴えにつき,同認可により定まる進入表面等の投影面内にある土地又は建物について権利を有する者の原告適格を肯定した事例 4 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可の取消しを求める訴えにつき,公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律8条の2に基づき指定された第一種区域内の土地又は建物につき権利を有する者のうち,前記認可により定まる進入表面等の投影面内にある土地又は建物について権利を有しない者の原告適格を否定した事例 5 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可の取消しを求める訴えにつき,同空港について運輸大臣が指定した円錐表面の投影面内にある土地又は建物について権利を有する者の原告適格を否定した事例 6 航空法56条の2第1項に基づき運輸大臣がした新東京国際空港に係る円錐表面等の指定の取消しを求める訴えにつき,同円錐表面の投影面内にある土地又は建物について権利を有する者の原告適格を肯定し,その余の近隣住民の原告適格を否定した事例 7 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可の取消請求が棄却された事例 8 航空法56条の2第1項に基づき運輸大臣がした新東京国際空港に係る円錐表面等の指定の取消請求が棄却された事例

裁判要旨

 1 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可に伴う同法55条の3第2項,40条による進入表面,転移表面及び水平表面の告示は,同法56条,49条所定の公用制限が及ぶ範囲を初めて現実化させるものであるが,その範囲自体は法令上当然に確定されるものであるから,前記告示は,国民の権利義務の範囲を確定する行為ではなく,取消訴訟の対象となる行政処分に当たらない。 2 航空法56条の2第1項に基づき運輸大臣がした第一種空港に係る延長進入表面,円錐表面及び外側水平表面の指定は,当該第一種空港を航空の用に供するという一定の目的のため,前記の延長進入表面等の投影面内の区域の土地及び建物の所有者その他の利用権者の財産権に従前にはなかった具体的な制限を加えるものであり,国民の権利義務の範囲を制限する確定的効果を持つものであるから,取消訴訟の対象となる行政処分に当たる。 3 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可の取消しを求める訴えにつき,同認可により定まる進入表面,転移表面及び水平表面の投影面内にある土地又は建物について権利を有する者は,同法56条,49条により建造物の設置等の禁止の義務を負うこととなるから,同認可の取消しを求める法律上の利益があるとして,その原告適格を肯定した事例 4 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可の取消しを求める訴えにつき,同法55条の3第2項が準用する同法39条1項2号は,前記認可に当たっての審査基準として,当該飛行場の設置によって「他人の利益」を著しく害することとならないものであることを掲げているが,前記認可後に成立した公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律に定めるところが同認可に際しての審査基準として考慮されるべきものとはいえないし,航空関係法令には前記認可に当たって近隣住民等の騒音被害を考慮することを義務付ける規定は見当たらないことや,航空法55条の2第2項ただし書の趣旨からすれば,前記「他人の利益」には,個別の近隣住民等の騒音被害を受けない利益を含むとは解されないとして,前記公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律8条の2に基づき指定された第一種区域内の土地又は建物につき権利を有する者のうち,前記認可により定まる進入表面等の投影面内にある土地又は建物について権利を有しない者の原告適格を否定した事例 5 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可の取消しを求める訴えにつき,同空港について運輸大臣が指定した円錐表面の投影面内にある土地又は建物について権利を有する者は,前記認可によりその土地又は建物に対する権利に何ら影響を受けるものではないとして,その原告適格を否定した事例 6 航空法56条の2第1項に基づき運輸大臣がした新東京国際空港に係る延長進入表面,円錐表面及び外側水平表面の指定の取消しを求める訴えにつき,前記円錐表面の投影面内にある土地又は建物について権利を有する者は,同法56条の4所定の建造物の設置等の禁止の義務を負うこととなるから,前記指定の取消しを求める法律上の利益があるとして,原告適格を肯定し,新東京国際空港の敷地予定地の範囲内の土地又は建物について権利を有する者及び運輸大臣がした同空港設置のための工事実施計画の認可によって定まる進入表面等の投影面内にある土地又は建物について権利を有する者は,前記指定によりその権利に何らの影響を受けず,また,公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律8条の2に基づき指定された第一種区域内の土地又は建物につき権利を有する者のうち,前記の延長進入表面等の投影面内にある土地又は建物について権利を有しない者の騒音被害を受けないという利益は航空法56条の3第1項にいう「その他の利害関係を有する者の利益」に含まれると解することはできないとして,これらの者の原告適格を否定した事例 7 航空法55条の3第1項に基づき運輸大臣が新東京国際空港公団に対してした新東京国際空港設置のための工事実施計画の認可の取消請求が,前記計画は航空法55条の3第1項及び2項所定の実体的要件を具備し,認可に当たっての手続的要件も履践されているから,前記認可に違法はないとして,棄却された事例 8 航空法56条の2第1項に基づき運輸大臣がした新東京国際空港に係る円錐表面等の指定の取消請求が,前記指定は,同法56条の3第1項所定の実体的要件に適合し,所定の手続を経た適法なものであるとして,棄却された事例

全文