裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
昭和63(行コ)77
- 事件名
公金違法支出返還請求控訴事件
- 裁判年月日
平成2年9月26日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 元町長の死亡に伴う町民葬に当たり,町が,葬儀委員会に対し補助金を支出したこと及び公民館を無料で使用させたこと等が違憲,違法であるとして,町長個人に対し,前記補助金交付決定,町職員の派遣及び給与支給の命令及び公民館使用料免除の命令をしたことを理由に,町収入役個人に対し,町長の前記命令を受けて町の公金を支出したことを理由に提起された地方自治法242条の2第1項4号に基づく損害賠償請求につき,同町公民館使用料徴収条例によれば,町長は,公民館の使用料の減免についての認定権限を有するものの,財務会計上の行為である公民館の使用料の免除自体についての最終的決定権限は教育長又は教育長から権限の委任を受けた公民館長がこれを有しており,町長及び収入役はその権限を有していないから,前記使用料免除による損害賠償請求に関する訴えについては,同人らは,同号にいう「当該職員」に該当しないとして,訴えを却下した事例 2 元町長の死亡に伴う町民葬に当たり,町が,葬儀委員会に対し補助金を支出したこと,葬儀に町職員を派遣してその手当を支給したこと,葬儀の場所として公民館を無料で使用させたことが違憲,違法であるとして,同町助役個人に対し,専決権限を根拠に,地方自治法242条の2第1項4号に基づき提起された損害賠償請求の訴えが,同人が同町役場事務決裁規程及び同町財務規則に基づき有していた専決権限又は代決権限の行使として前記各支出行為等の財務会計行為を行った事実は認められないから,同人は同号にいう「当該職員」に該当しないとして,却下された事例 3 元町長の死亡に伴う町民葬に当たり,町が,葬儀委員会に対し補助金を支出したこと,葬儀に町職員を派遣してその手当を支給したこと,葬儀の場所として公民館を無料で使用させたことが違憲,違法であるとして,同町総務課長個人に対し,前記各支出行為等の手続事務を行ったこと等を理由に地方自治法242条の2第1項4号に基づき提起された損害賠償請求の訴えが,同人が同支出行為等の財務会計行為を行う権限を法令上本来的に有していたこと又はこれらの権限を有する者から適法な委任を受けるなどしてその権限を有していたとは認められず,また,前記職員の派遣行為は,同人が同町役場事務決裁規程による専決権限に基づいてしたものではあるが,財務会計上の行為には当たらないから,同人は,同号にいう「当該職員」に当たらないとして,却下された事例 4 元町長の死亡に伴う町民葬を町長を委員長とする葬儀委員会が主催して仏式で行い,町が,同委員会に対して補助金を交付し,町公民館の使用を許可するとともにその使用料を免除し,同町民葬の準備,執行のために町職員を派遣した場合につき,前記葬儀委員会は形式的には町の附属機関ではない上,前記町民葬を実施する意義,目的は,元町長の功績を顕彰するため,一般的慣習によって行われる私人の葬儀の格式を高め,規模を拡大するとともに,これに全町的な意義,性格を持たせようとすることにあり,その効果においても,仏教における宗教的活動を援助,助長,促進したり,仏教以外の他の宗教に圧迫,干渉を加えたりすることにはならないから,前記町民葬の実施は,憲法20条3項にいう宗教的活動には当たらないものというべきであり,したがって,前記補助金交付も憲法89条に違反せず,また,前記職員の派遣行為も憲法20条に違反しないとした事例 5 元町長の死亡に伴う町民葬を町長を委員長とする葬儀委員会が主催して仏式で行った場合において,町が,同委員会に対してした補助金の交付につき,同町民葬は,元町長らの功績を讃え追悼する全町的な意義,目的,規模で広く町内外の一般人が参加して行われたものであるから,町が財政面から援助,協力することは町の性格,存在に照らして公益上有益であり,地方自治法232条の2に違反しないとした事例 6 元町長の死亡に伴う町民葬を町長を委員長とする葬儀委員会が主催して仏式で行った場合において,町が,町民葬の準備,執行のために町職員を従事させ,時間外手当を支給したことが,同町民葬の意義,目的等に照らすと,普通地方公共団体に属する町においても許されるべき範囲内の行為であり,その役務は町の事務に属するとして,適法とされた事例
- 裁判要旨
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