裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成2(行ク)12
- 事件名
執行停止申立事件
- 裁判年月日
平成2年4月25日
- 裁判所名
東京地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 逃亡犯罪人引渡法14条1項に基づく法務大臣の引渡命令の執行停止を求める申立てにつき,同命令の執行が終了した場合には同命令の取消しを求める本案訴訟は訴えの利益を失うことが明らかであり,同命令により被る損害を前記本案訴訟以外の方法で回復することは困難であるから,行政事件訴訟法25条2項にいう「処分の執行により生ずる回復の困難な損害を避けるため緊急の必要があるとき」に当たるとした事例 2 逃亡犯罪人引渡命令取消しの訴えにおける裁判所の審査の範囲 3 逃亡犯罪人引渡法14条1項に基づく法務大臣の引渡命令が違法となる場合 4 逃亡犯罪人引渡法14条1項に基づく法務大臣の引渡命令の執行停止を求める申立てが,当該引渡犯罪は民間航空機に対するハイジャック事犯という重大事犯であり,その内容が同法上保護を必要とするほどの政治的性質を有する犯罪には該当しないとの判断が東京高等裁判所によりされているなどの事情のもとでは,請求国に対する外交的配慮等の諸要素を総合考慮してされるべき高度の政治的,裁量的な性質を有する法務大臣の判断が,社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかで違法であるとはいえないから,行政事件訴訟法25条3項にいう「本案について理由がないとみえるとき」に当たるとして,却下された事例
- 裁判要旨
2 逃亡犯罪人引渡法による逃亡犯罪人の引渡手続においては,同法2条各号所定の引渡制限事由の存否はもとより,それ以外の法律上又は条約を始めとする国際法規上の引渡制限事由の存否に関する法的な判断は,専ら,同法9条,10条の東京高等裁判所の判断にゆだねられており,法務大臣は,その判断に拘束され,当該引渡しを行うことが相当であると認められるか否かを専ら行政的観点から判断し得るにすぎないから,同法14条2項に基づく法務大臣の引渡命令の取消訴訟において,裁判所が同命令の違法事由として審査できるのは,法務大臣の行政的観点からする相当性判断に違法事由があるか否かの点に限られる。 3 法務大臣の逃亡犯罪人を引き渡すか否かの判断は,請求国に対する外交的配慮,国内法秩序維持の必要,当該逃亡犯罪人の人権保護その他の要素を総合考慮してされるべき高度の政治的,裁量的判断であるから,社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかでない限り,裁量の範囲を超え又はその濫用があったものとして違法とされることはない。
- 全文