裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
昭和57(行ウ)4
- 事件名
忠魂碑等維持管理補助金返還請求事件
- 裁判年月日
平成2年2月20日
- 裁判所名
長崎地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 戦没者等の慰霊のために建てられ,市がその維持管理団体に対して補助金を交付している忠魂碑等の戦没者慰霊碑14基のうち,13基は戦没者等を追悼,顕彰するための記念碑であって宗教施設に当たらないが,1基は,護国神社の前身として国家神道の宗教施設であったものであり,戦後においてもなお,護国神社の神官主宰で神式の宗教儀式により慰霊祭を行っているから,記念碑に性格を変じているとみることはできないとして,神社神道の宗教施設に当たるとした事例 2 憲法89条前段にいう「宗教上の組織若しくは団体」及び同法20条1項後段にいう「宗教団体」の意義 3 市が,戦没者等の慰霊のために建てられた14基の忠魂碑等の維持管理者である遺族会,連合自治会等の各団体に対し,碑の維持管理等に要する経費の補助金を交付した行為が,前記各団体は,いずれも宗教的活動を目的とする組織,団体ではなく,憲法89条前段にいう「宗教上の組織若しくは団体」及び同法20条1項後段にいう「宗教団体」に当たらないとして,これらの各条項に違反しないとされた事例 4 市が,戦没者等の慰霊のために建てられた14基の忠魂碑等の維持管理者である遺族会,連合自治会等の各団体に対し,碑の維持管理等に要する経費の補助金を交付した行為が,宗教施設ではない13基に対する支出については,その目的が英霊信仰の宗教教育の実施にあるとは認められず,その効果も,特定の宗教あるいは宗教一般を援助,助長,促進し,又は他の宗教に圧迫,干渉を加えるものではないから,憲法20条3項にいう「宗教的活動」に当たらないが,宗教施設である1基に対する支出については,その目的が特定宗教施設そのものの維持管理であり,その効果も,護国神社の儀式による慰霊祭の費用の一部を援助する結果をもたらしている点で,特定宗教を市が援助,助長する効果を有するものであって,同項にいう「宗教的活動」に当たるとされた事例 5 市が,戦没者等の慰霊のために建てられた14基の忠魂碑等の維持管理者である遺族会,連合自治会等の各団体に対してした補助金の支出が違憲,違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づいてした市長個人に対する損害賠償請求が,13基に対する支出については,違憲,違法ではないが,1基に対する支出については,憲法20条3項に違反し違法であり,市長にはその支出につき少なくとも過失があったとして,前記1基に対する支出金相当額の損害の賠償を求める限度で,認容された事例
- 裁判要旨
2 憲法89条前段にいう「宗教上の組織若しくは団体」及び同法20条1項後段にいう「宗教団体」とは,宗教的活動を目的とする団体をいい,本来このような目的を有しない団体又は組織が,その本来の事業の目的を遂行する上で臨時的又は定期的に宗教的儀式,行事ないし宗教にかかわり合いのある行為を企画実行しているからといって,前記各条項に該当するとはいえない。
- 全文