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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成13(行ウ)150

事件名

 行政文書不開示処分取消請求

裁判年月日

 平成18年2月28日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号該当性に関して,当事者が主張,立証すべき事項 2 外務省の大臣官房及び4か国の在外日本国大使館における「報償費」の費目による支出の内容がわかる文書のうち,前記支出と同種の支出についての会計検査院の検査により,報償費ではなく他の費目で支出するよう改善する必要があると指摘された各類型の経費(大規模レセプションの経費,酒類購入経費,本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費,文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の文書に記載された情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号に不開示事由として規定された国の安全等に関する情報及び同条6号に不開示事由として規定された事務事業情報に当たるとはいえないとされた事例 3 外務省の大臣官房及び4か国の在外日本国大使館における「報償費」の費目による支出の内容がわかる文書のうち,前記支出と同種の支出についての会計検査院の検査により,報償費ではなく他の費目で支出するよう改善する必要があると指摘された各類型の経費(大規模レセプションの経費,酒類購入経費,本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費,文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書に記載された情報のうち,大規模レセプションの経費及び本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費に関する情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条6号に不開示事由として規定された事務事業情報に当たるとされた事例 4 外務省の大臣官房及び4か国の在外日本国大使館における「報償費」の費目による支出の内容がわかる文書のうち,前記支出と同種の支出についての会計検査院の検査により,報償費ではなく他の費目で支出するよう改善する必要があると指摘された各類型の経費(大規模レセプションの経費,酒類購入経費,本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費,文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書に記載された情報のうち,酒類購入経費,文化啓発用の日本画等購入経費に関する情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号に不開示事由として規定された国の安全等に関する情報及び同条6号に不開示事由として規定された事務事業情報に当たらないとされた事例

裁判要旨

 1 開示請求に係る行政文書が行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号の不開示事由に該当することを理由として不開示処分をした場合には,同号が「公にすることにより,国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」と規定していること,当該情報が一般の行政運営に関する情報とは異なり,その性質上,開示,不開示の判断に高度の政策的判断を必要とすることからして,裁判所は,同号に規定する情報に該当するか否かについての行政機関の長の第一次的な判断を尊重し,その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるかどうか,裁量権の逸脱ないし濫用があると認められる点があるかどうかを判断すべきものであり,請求者においては,前記裁量権の逸脱又は濫用があったことを基礎付ける具体的事実について主張,立証することを要するものと解されるが,不開示事由の存否が問題となる文書がそもそも請求者及び裁判所の目に触れる状況に置かれることがないのであるから,当該文書自体を開示できないことにもかんがみて,当該文書の外形的事実等から判断される一般的,類型的にみた限りの当該文書の性質として,「国の安全が害されるおそれ,他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがある」と行政機関の長が判断をし得る情報が記録されているものであることについては,処分庁(現行行政事件訴訟法により被告となる場合には国)において,主張,立証することを要するものと解すべきである。 2 外務省の大臣官房及び4か国の在外日本国大使館における「報償費」の費目による支出の内容がわかる文書のうち,前記支出と同種の支出についての会計検査院の検査により,報償費ではなく他の費目で支出するよう改善する必要があると指摘された各類型の経費(大規模レセプションの経費,酒類購入経費,本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費,文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書以外の文書に記載された情報につき,部分開示等がされた前記各類型の経費に係る文書の内容,情報公開審査会の答申で示された判断の内容,在外公館交流諸費との対比等から,前記各類型に係る文書以外の文書に記載された「報償費」の使途には,「公にしないことを前提とする外交活動」のための経費支出には当たらないものが相当数含まれることが推認できるとした上で,前記各類型に係る文書以外の文書を不開示処分とした処分庁において,当該文書の外形的事実等から判断される一般的,類型的にみた限りの当該文書の性質として,行政機関の保有する情報の公開に関する法律に規定する不開示事由に該当することについて主張,立証するべきであるところ,その立証が尽くされていないとして,前記情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号に不開示事由として規定された国の安全等に関する情報及び同条6号に不開示事由として規定された事務事業情報に当たるとはいえないとされた事例 3 外務省の大臣官房及び4か国の在外日本国大使館における「報償費」の費目による支出の内容がわかる文書のうち,前記支出と同種の支出についての会計検査院の検査により,報償費ではなく他の費目で支出するよう改善する必要があると指摘された各類型の経費(大規模レセプションの経費,酒類購入経費,本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費,文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書に記載された情報のうち,大規模レセプションの経費及び本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費に関する情報につき,大規模レセプションの経費に関しては,料理等の調達先及び招待者の氏名等の情報や,支払先が特定される請求書及び領収書に記載された情報,また,本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費に関しては,車両の調達先及び車種並びに事務連絡室の所在等に関する情報や,支払先が特定される請求書及び領収書に記載された情報については,いずれも,公にされることによって,関係者等に危害を加えようとする者に必要以上の手掛かりを与えるなど,テロ対策等において想定外の事態を生じさせる可能性が高まり,安全確保を困難にする蓋然性を認めることができ,外交事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるといえるとして,前記各情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条6号に不開示事由として規定された事務事業情報に当たるとされた事例 4 外務省の大臣官房及び4か国の在外日本国大使館における「報償費」の費目による支出の内容がわかる文書のうち,前記支出と同種の支出についての会計検査院の検査により,報償費ではなく他の費目で支出するよう改善する必要があると指摘された各類型の経費(大規模レセプションの経費,酒類購入経費,本邦関係者が外国訪問した際の車の借り上げ等の事務経費,文化啓発用の日本画等購入経費)に係る文書に記載された情報のうち,酒類購入経費,文化啓発用の日本画等購入経費に関する情報につき,酒類購入経費に関しては,公にされることによって,外交儀礼にもとる事態が生ずるとは容易に考えられず,それを原因として,事務の適正な遂行に支障を及ぼすことになったり,国の安全が害されたり,他国との信頼関係が損なわれたりといった事態が発生することについても同様であるとして,また,文化啓発用の日本画等購入経費に関しても,公費を用いて備品の購入をしている以上,その購入価額を明らかにすることにも,事務の適正な遂行という観点から一定の利益を認め得るところであって,少なくとも,情報を秘匿して同一の取引関係を維持する利益が常にこれを上回るなどとはいえず,そのことをもって事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとはいい難いとして,前記各情報が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条3号に不開示事由として規定された国の安全等に関する情報及び同条6号に不開示事由として規定された事務事業情報に当たらないとされた事例

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