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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成15(行コ)79

事件名

 障害基礎年金不支給決定取消等請求控訴事件(原審・京都地方裁判所平成12年(行ウ)第6号)

裁判年月日

 平成17年10月27日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 廃疾認定日において日本国籍を有しない者を障害福祉年金の支給対象から除外していた国民年金法(昭和56年法律第86号による改正前)56条1項ただし書が,憲法14条1項,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約2条2項,9条及び市民的及び政治的権利に関する国際規約26条に違反しないとされた事例 2 幼少時から感音性難聴等の障害を有する在日韓国人,朝鮮人(一部帰化により日本国籍を取得した者を含む。)に対し,府知事が国民年金法(昭和56年法律第86号による改正前)56条1項ただし書に基づいてした障害基礎年金を支給しない旨の処分が,適法とされた事例

裁判要旨

 1 廃疾認定日において日本国籍を有しない者を障害福祉年金の支給対象から除外していた国民年金法(昭和56年法律第86号による改正前)56条1項ただし書(以下「国籍条項」という。)につき,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「A規約」という。)2条2項は,締結国において,社会保障についての権利の平等な実現を積極的に推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものというべきであり,市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「B規約」という。)26条も,A規約が適用される社会権に関する限り,政治的責任を示したものとせざるを得ず,社会権についての合憲性,合法性の判断は憲法14条によることで十分であるとした上,社会保障上の政策において,国が,外国人に対し,憲法上当然にはその福祉を増進すべき施策をとる義務を負わないことに加え,国民年金制度が,拠出制の社会保険として制度設計されたものであり,被保険者には長期間の保険料支払義務を課すこととの権衡上,必ずしも本邦に在留することが安定的と見られなかった外国人について,前記改正前の国民年金法制定時において,これらを被保険者としなかったことに合理性がないとか,立法府において,その裁量権を逸脱,濫用したものということはできないとして,国籍条項は,憲法14条1項,A規約2条2項,9条及びB規約26条に違反しないとした事例 2 幼少時から感音性難聴等の障害を有する在日韓国人,朝鮮人(一部帰化により日本国籍を取得した者を含む。)に対し,府知事が国民年金法(昭和56年法律第86号による改正前)56条1項ただし書(以下「国籍条項」という。)に基づいてした障害基礎年金を支給しない旨の処分につき,国籍条項,難民の地位に関する条約等への加入に伴う出入国管理令その他関係法律の整備に関する法律(昭和56年法律第86号)2条により国籍条項が削除されたことによる国籍要件の撤廃は遡及して適用されない旨定めた同法附則5項及び国民年金法等の一部を改正する法律(昭和60年法律第34号)附則32条1項の各立法行為並びに在日韓国人,朝鮮人の無年金障害者のための救済措置を講じない立法不作為は,いずれも憲法14条1項,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約2条2項,9条及び市民的及び政治的権利に関する国際規約26条に違反せず,国籍条項は有効であるとして,前記処分を適法とした事例

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