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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成15(行ウ)19

事件名

 生活保護変更決定取消等請求事件

裁判年月日

 平成17年10月20日

裁判所名

 京都地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 生活保護を受給していた者が障害基礎年金を受給することになったとしてされた,生活保護費のうち同年金相当額を減額する保護変更決定が,適法とされた事例 
2 生活保護を受給していた者が障害基礎年金をさかのぼって受給することになったとしてされた,既に支給されていた生活保護費のうち,さかのぼって受給した同年金相当額から前記の者から申出のあった電子レンジ及び洗濯機の購入費用に相当する金額を控除した金額の返還を命ずる決定が,適法とされた事例

裁判要旨

 1 生活保護を受給していた者が障害基礎年金を受給することになったとしてされた,生活保護費のうち同年金相当額を減額する保護変更決定につき,同年金は,障害という定型的な事由により稼働能力が減少又は喪失され,所得が減少又は喪失した場合に,その所得を一部補てんするための所得保障という性質を有するものであり,同年金が障害者の特別の需要も考慮したものであるとしても,生活保護法にいう最低限度の生活についても,障害者の特別の需要が考慮された実質的なものであることなどからすれば,同年金が,障害者の最低限度の生活の維持(障害者の特別の需要も考慮したもの)以外の自立助長等の目的で活用することが予定されているものとはいえず,さらに,同年金が保険料を拠出したことに基づく給付という性格を有するものであることをも併せ考慮すると,同年金は,生活保護法4条1項にいう「資産」ないし同法8条にいう「金銭又は物品」に当たるとした上,「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)における障害者加算の額は著しく低額とはいえず,厚生労働大臣の裁量権の逸脱又は濫用があったとすることはできないから,前記基準に従って算定した額を基準に支給額を定めたことも適法であり,また,障害基礎年金と合わせると同年金を受給する前に支給を受けていた生活保護費の額と同額を得ることができ,生活の程度に変化をもたらすものではないなどとして,前記保護変更決定を適法とした事例 
2 生活保護を受給していた者が障害基礎年金をさかのぼって受給することになったとしてされた,既に支給されていた生活保護費のうち,さかのぼって受給した同年金相当額から前記の者から申出のあった電子レンジ及び洗濯機の購入費用に相当する金額を控除した金額の返還を命ずる決定につき,生活保護法63条の規定する保護実施機関が定める返還額については,当該世帯の自立更生等のためにやむを得ない用途に充てられたものかどうか,地域住民との均衡を考慮し,社会通念上容認される程度であるかどうか,同条に規定する保護金品の全額を返還額とすることが当該世帯の自立を著しく阻害するかどうかについての保護実施機関の判断に合理性がなく,その判断について,裁量権の逸脱ないし濫用がある場合には違法となるとした上,前記の者が,自分の必要な物が何であるか判断し,これを申し出る能力を有していることからすれば,申出のない物品の購入費用等を当然に同条の返還額から控除すべきであったとはいえないなどとして,前記決定についての福祉事務所長の判断は合理的なものであり,裁量権を逸脱又は濫用があるとは認められないから,前記決定は適法であるとした事例

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