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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)71

事件名

 PCB処理施設設置許可処分取消請求事件

裁判年月日

 平成18年3月29日

裁判所名

 名古屋地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条1項に基づく同法施行令7条12号の2及び13号に規定する各産業廃棄物処理施設(廃ポリ塩化ビフェニル等又はポリ塩化ビフェニル処理物の分解施設及びポリ塩化ビフェニル処理物の洗浄施設)の設置許可処分の取消しを求める訴えにおいて,前記各施設の設置予定地から最大でも約6.4キロメートルの範囲内に居住する住民らの原告適格が,肯定された事例 2 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条1項に基づく同法施行令7条12号の2及び13号に規定する各産業廃棄物処理施設(廃ポリ塩化ビフェニル等又はポリ塩化ビフェニル処理物の分解施設及びポリ塩化ビフェニル処理物の洗浄施設)の設置許可処分の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条1項に基づく同法施行令7条12号の2及び13号に規定する各産業廃棄物処理施設(廃ポリ塩化ビフェニル等又はポリ塩化ビフェニル処理物の分解施設及びポリ塩化ビフェニル処理物の洗浄施設)の設置許可処分の取消しを求める訴えにおいて,前記法律は,少なくとも前記各施設について,その周辺に居住し,これらの施設から有害な物質が排出された場合に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民の生命,身体の安全や健康維持を個々人の個別具体的な利益としても保護する趣旨を含むと解するのが相当であるとした上,前記範囲を画するに際しては,当該施設の一部の機能不全といった軽度の異常事態のみを想定するだけでは足りず,広範な災害に発展し得る大規模事故の発生などの事態をも考慮すべきものと考えられ,また,その被害の及び得る範囲については,廃棄物の適正な処理の促進に関する条例(平成15年愛知県条例第2号)及び同施行規則が設置計画についての住民説明会の開催を義務付けている関係地域を定めるに際し,大気汚染に関しては,地域の気象特性,行政区域や地形,土地利用の状況をも勘案することとし,さらに,廃棄物運搬車両による影響をも考慮して,生活環境に影響を及ぼすおそれがあると認められる地域を設定すべき旨を規定していることが重要な資料となるとし,前記分解施設において,火災あるいは爆発などの大規模な事故が発生した場合には,放出される有害物質による悪影響は,前記各施設設置予定地付近の風向の特性に照らすと,市街地の広範な範囲に拡散される可能性が高いと考えられることから,前記各施設から最大でも約6.4キロメートルの範囲内にある市街地に居住している住民らは,いずれも同施設から有害な物質が排出された場合に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲内に居住する者として,前記訴えについて原告適格を有するとした事例 2 県知事がした廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条1項に基づく同法施行令7条12号の2及び13号に規定する各産業廃棄物処理施設(廃ポリ塩化ビフェニル等又はポリ塩化ビフェニル処理物の分解施設及びポリ塩化ビフェニル処理物の洗浄施設)の設置許可処分の取消請求につき,前記施行令7条で定める産業廃棄物処理施設の設置許可要件を定める前記法15条の2第1項2号にいう維持管理に関する計画とは,同施設の維持管理の技術上の基準に従った維持管理が可能であることが科学的に裏付けられ,かつこのように科学的に裏付けられた維持管理に関する計画が策定されたことを要するとした上,同項2号に掲げる事項の基準適合性については,生活環境の保全に関し環境省令で定める事項について専門知識を有する者(から成る審査会)の意見を十分に尊重して行う都道府県知事の合理的な判断にゆだねていると解されるから,現在の科学技術水準に照らし,審査会の調査審査において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり,あるいは当該施設が具体的審査基準に適合するとした審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があり,都道府県知事の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,上記判断に不合理な点があるものとして,これに基づく許可処分は違法となると解すべきところ,前記分解施設については,前記法施行規則12条の7第13項4号ト及び14項3号チで定めるダイオキシン類濃度を含め,特段安全性に欠ける点はないとした審査会の調査審査及び判断過程に看過し難い過誤,欠落があるとはいえないなどとして,前記請求を棄却した事例

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