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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)4

事件名

 横浜市立保育園廃止処分取消請求事件

裁判年月日

 平成18年5月22日

裁判所名

 横浜地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 横浜市保育所条例の一部を改正する条例(平成15年横浜市条例第62号)の制定によって市立保育所が廃止され民営化されたことが,行政事件訴訟法3条2項所定の「処分」に該当するとされた事例 2 横浜市保育所条例の一部を改正する条例(平成15年横浜市条例第62号)の制定によって廃止され,民営化された市立保育所に入所していた児童及びその保護者らが,市に対して,前記条例の制定は抗告訴訟の対象たる処分に該当し,児童及び保護者らの保育所選択権等を侵害するものであって違法であるとしてした同処分の取消請求につき,行政事件訴訟法31条1項により,請求が棄却されるとともに,前記条例の制定が違法であると宣言された事例

裁判要旨

 1 横浜市保育所条例の一部を改正する条例(平成15年横浜市条例第62号)の制定によって市立保育所が廃止され民営化されたことにつき,児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益は,いずれも法律上保護された利益であり,前記条例の制定は,このような利益を他に行政庁による具体的な処分によることなく必然的に侵害するものであり,また,前記条例は対象となる各保育園における保育の実施を解除するものであり,児童福祉法はこれを不利益処分と位置づけていると解されることから,前記条例の制定は,行政事件訴訟法3条2項所定の「処分」に該当するとした事例 2 横浜市保育所条例の一部を改正する条例(平成15年横浜市条例第62号)の制定によって廃止され,民営化された市立保育所に入所していた児童及びその保護者らが,市に対して,前記条例の制定は抗告訴訟の対象たる処分に該当し,児童及び保護者らの保育所選択権等を侵害するものであって違法であるとしてした同処分の取消請求につき,前記条例の制定による保育所の民営化は,市の財政状況を前提として,その中で待機児童の解消を図るとともに,多様な保育ニーズに応えていくことを目的としたものと認められ,民営化するという判断自体は違法とまでいうことはできないが,入所児童がいる保育所を民営化するについては,当該保育所で保育の実施を受けている児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益を尊重する必要があり,その同意が得られない場合には,そのような利益侵害を正当化し得るだけの合理的な理由とこれを補うべき代替的な措置が講じられることが必要であると解されるとした上で,代替措置としての民営化後の移管先の選定等について特段の問題はない一方で,保護者と市との関係については,前記条例制定時点において,民営化について大方の保護者の承諾が得られているとはいい難い状況であったのみならず,市が,民営化の方針を突然公表したこと,市がその1年後には民営化を決定事項として対応して協議の余地がなかったことなどから,保護者らが態度を硬化させ,建設的な話し合いや早急な信頼関係の回復が可能な状況でもないことが認められ,このような状況下で,早急な民営化を実施すべき特段の事情があったとはいえず,市の説明する理由もこれを正当化する根拠としては不十分であり,前記条例の制定によって保育所の廃止及び民営化を予定の期日に実施することは,児童及び保護者の特定の保育所で保育の実施を受ける利益を尊重したものとは到底いえず,市の裁量の範囲を逸脱,濫用したものであるが,前記条例の制定を取り消すことは公の利益に著しい障害を生じ,公共の福祉に適合しないものと認められるとして,行政事件訴訟法31条1項により,前記請求を棄却するとともに,前記条例の制定が違法であると宣言した事例

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