裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
平成17(行コ)149等
- 事件名
運転免許更新処分取消請求控訴事件,同附帯控訴事件(原審・千葉地方裁判所平成15年(行ウ)第14号)
- 裁判年月日
平成17年12月26日
- 裁判所名
東京高等裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 運転免許証の更新申請に対し,公安委員会が有効期間を3年とする運転免許証を交付する行為の行政処分性 2 過去の安全運転義務違反行為のため,道路交通法92条の2第1項の表の備考一の4に定める違反運転者等に該当するとして,更新後の有効期間を5年ではなく,3年とした運転免許証の更新を受けた者が,同更新処分には行政手続法に定める手続がとられなかった違法がある等としてした,同更新処分の取消請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
1 運転免許証の更新申請に対し,公安委員会が有効期間を3年とする運転免許証を交付する行為の行政処分性につき,道路交通法92条の2第1項により,違反運転者等に該当する者の更新後の運転免許証の有効期間は3年とされているのに対し,更新日の年齢が70歳未満の者の場合,優良運転者及び一般運転者に該当する者の更新後の運転免許証の有効期間は5年とされるなど,更新手続の負担が軽減されているところ,このような優良運転者及び一般運転者に与えられている地位ないし利益は,公安委員会が法の規定によって付与しているものと解されるから,その地位ないし利益が公安委員会の違法・不当な処分によって侵害された場合は,その回復を求めることができるというべきであり,また,運転免許証の有効期間の区分自体が行政処分であると解することはできないことなどからすれば,有効期間を3年とする運転免許証の更新処分そのものが取消訴訟の対象となる行政処分に当たる。 2 過去の安全運転義務違反行為のため,道路交通法92条の2第1項の表の備考一の4に定める違反運転者等に該当するとして,更新後の有効期間を5年ではなく,3年とした運転免許証の更新を受けた者が,同更新処分には行政手続法に定める手続がとられなかった違法がある等としてした,同更新処分の取消請求について,自動車の運転免許制度のように,道路の安全等を確保するという目的のために,原則として禁止されている自動車の運転行為を,一定の要件を備えた者一般に対し解除して許すという性質の処分については,運転免許証の取得あるいはその更新手続に一定の基準が設けられ,そのために何らかの制限や制約を受ける者があるとしても,それが特定の者を名あて人として,直接に義務を課し,又はその権利を制限する処分に該当するとはいえないから,そのような制約等が行政手続法2条4号にいう不利益処分と解することはできず,これにつき行政手続法12条ないし14条に定める手続がとられていないという違法はなく,また,同更新処分は行政手続法2条3号の申請に対する処分に当たるが,道路交通法101条5項が,公安委員会は適性検査の結果から判断して,申請者が自動車の運転に支障がないと認めたときは,その者について当該免許証の更新をしなければならないと定めており,かつ,更新後の運転免許証の有効期間を3年とするか5年とするかについては,道路交通法92条の2,道路交通法施行令33条の7が,その区分を一義的に明確に定めていることからすれば,公安委員会には裁量により有効期間の区分を決定して更新を行う余地がなく,申請者が更新後の運転免許証の有効期間を5年とする具体的な更新請求権を有しているものと解することはできないから,更新後の運転免許証の有効期間を3年とする更新処分は,これを5年とする更新処分の内容についての一部拒否処分であると解することはできず,行政手続法8条の「申請により求められた許認可等を拒否する処分」には該当しないから,公安委員会には同条の理由提示義務はないなどとして,前記請求を棄却した事例
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