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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行コ)70

事件名

 高石市立東羽衣保育所廃止処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成13年(行ウ)第79号)

裁判年月日

 平成18年1月20日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 高石市立保育所設置条例の一部を改正する条例(平成13年高石市条例第10号)の制定によって廃止された市立保育所に在所していた児童の保護者が,市に対して提起したその廃止の取消しを求める訴えが,同条例の制定による前記保育所の廃止は前記保護者の具体的な権利を侵害する行政処分に当たるとして,適法とされた事例 2 高石市立保育所設置条例の一部を改正する条例(平成13年高石市条例第10号)の制定によって廃止された市立保育所に在所していた児童の保護者が市に対して提起した同廃止処分の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 高石市立保育所設置条例の一部を改正する条例(平成13年高石市条例第10号)の制定によって廃止された市立保育所に在所していた児童の保護者が,市に対して提起したその廃止の取消しを求める訴えにつき,地方公共団体の行う条例の制定は,通常は,一般的,抽象的な規範を定立する立法作用の性質を持つものであり,抗告訴訟の対象となる処分には当たらないが,他に行政庁の具体的処分を経ることなく,当該条例自体によって,その適用を受ける特定の個人の具体的な権利義務に直接影響を及ぼすような例外的な場合には,当該条例の制定行為自体をもって行政処分とみる余地が存するとした上,現に保育に欠ける児童が特定の保育所で保育を受けている保護者は,原則として,当該児童の就学までの期間,当該保育所において,保育を受ける権利ないし法的利益を有すると解されるから,前記条例の制定による保育所の廃止は,前記保護者の具体的な権利を侵害する行政処分に当たるとして,前記訴えを適法とした事例 2 高石市立保育所設置条例の一部を改正する条例(平成13年高石市条例第10号)の制定によって廃止された市立保育所に在所していた児童の保護者が市に対して提起した同廃止処分の取消請求につき,同処分は,財政状況が悪化している市が,財政効果の観点及び保育所民営化による待機児童の解消や延長保育の実施といった保育サービスの拡充の観点から,前記保育所を廃止,民営化することを目的として行ったものであって,その目的には合理性が認められ,これによって現に前記保育所に入所していた児童が就学時まで前記保育所において保育を受けることができなくなるなどの不利益を受けることは認められるものの,希望すれば,前記保育所と同じ場所で,同じ施設を用いて新たに設置運営される児童福祉法その他の法令等によって要求される水準を満たした保育園において,概ね,前記保育所と同水準の保育を受けることが可能であるというのであるから,これによって,特定の児童ないし保護者に著しく過重な負担を課し,保育所において保育を受けることを事実上不可能にするなどの事情は認められず,市に裁量権の逸脱ないし濫用があるということはできないとして,前記請求を棄却した事例

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